離婚協議書の清算条項とは?後からお金を請求できなくなる?行政書士が注意点を解説

離婚協議書の清算条項の意味や注意点を函館市の行政書士が解説

離婚協議書を作成するとき、「清算条項」という言葉を目にすることがあります。

清算条項とは、簡単にいえば、離婚に関するお金の問題などについて「これで話し合いはすべて終わりました」と確認するための条項です。

たとえば、離婚協議書の最後に、

「本協議書に定めるもののほか、甲および乙の間には何らの債権債務がないことを相互に確認する」

といった文章が記載されることがあります。

一見すると、離婚協議書によくある形式的な文章に見えるかもしれません。

しかし、清算条項は決して軽く考えてよい条項ではありません。

内容を十分に理解しないまま清算条項を入れてしまうと、離婚後に新たな財産が見つかった場合や、慰謝料などを請求したいと考えた場合に問題となる可能性があります。

反対に、清算条項を入れなければ、離婚後も金銭問題をめぐる争いが続くことがあります。

つまり、清算条項は「とりあえず入れておけばよい」というものでも、「危険だから入れない方がよい」というものでもありません。

重要なのは、離婚する夫婦がどの問題について合意し、どの問題がまだ残っているのかを整理したうえで、適切な内容の清算条項を定めることです。

この記事では、北海道函館市で離婚協議書や離婚公正証書の作成をサポートしている行政書士が、清算条項の意味、必要性、注意点、財産分与や慰謝料との関係について分かりやすく解説します。

目次

離婚協議書の清算条項とは

清算条項とは、当事者間において、離婚に関する金銭問題などが解決したことを確認するための条項です。

離婚するときには、さまざまなお金の問題が発生します。

たとえば、

・財産分与

・慰謝料

・養育費

・婚姻費用

・住宅ローン

・借金

・立替金

などです。

夫婦で話し合いを行い、これらの問題について合意したとしても、離婚後に、

「そういえば、あのお金を返してもらっていない」

「財産分与について、まだ請求できるのではないか」

「離婚後になって慰謝料を請求したくなった」

といった問題が発生することがあります。

そこで、離婚協議書に清算条項を設け、

「この離婚協議書に書かれているもの以外には、お互いに請求するものはありません」

ということを確認します。

これが清算条項の基本的な役割です。

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離婚時の約束を書面に残す必要性について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶離婚協議書は本当に必要? ~離婚後に困るのは実はお金より「記憶」です~

清算条項はなぜ必要なのか

離婚協議書を作成する大きな目的の一つは、離婚後のトラブルを防ぐことです。

夫婦が離婚に合意したとしても、それだけですべての問題が解決するとは限りません。

特に問題になりやすいのがお金です。

離婚後、数か月あるいは数年経ってから、一方が突然、

「まだ請求できるお金がある」

と主張することがあります。

請求された側としては、

「離婚するときにすべて解決したはずだ」

と考えるでしょう。

しかし、離婚協議書の内容が不明確であれば、本当にすべて解決していたのかをめぐって争いになる可能性があります。

清算条項を設けることで、夫婦双方が、

「離婚協議書に書かれた内容を除き、金銭的な問題は解決済みである」

と確認できます。

離婚後の蒸し返しを防ぐことが、清算条項の重要な役割なのです。

清算条項の一般的な文例

離婚協議書では、次のような清算条項が使われることがあります。

「甲および乙は、本協議書に定めるもののほか、甲乙間に何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。」

この文章を分かりやすく言い換えると、

「この離婚協議書に書かれていること以外には、お互いに請求できるお金などはありません」

という意味です。

ただし、実際の離婚協議書では、すべての夫婦に同じ清算条項を使用すればよいわけではありません。

夫婦ごとに、

・財産分与が終わっているか

・慰謝料の問題があるか

・住宅ローンが残っているか

・未払いの婚姻費用があるか

・養育費をどうするか

などの事情が異なるからです。

そのため、清算条項は離婚条件全体を確認したうえで作成する必要があります。

清算条項を入れるメリット

清算条項を入れる最大のメリットは、離婚後の紛争を防止できることです。

離婚後の金銭請求を防ぎやすくなる

離婚後になって、

「貸していたお金を返してほしい」

「もっと財産分与を受け取れるはずだった」

「精神的苦痛を受けたので慰謝料を請求したい」

などと言われる可能性があります。

清算条項があれば、離婚時点でどの問題まで解決していたのかを明確にできます。

離婚問題に区切りをつけられる

離婚は法律上の問題だけではありません。

精神的にも大きな負担がかかります。

離婚後も元配偶者から金銭請求を受ける可能性が残っていれば、新しい生活を始めても不安が続くことがあります。

清算条項によって夫婦間の問題に一定の区切りをつけることは、離婚後の生活を再スタートするうえでも重要です。

「言った・言わない」のトラブルを防げる

口頭の話し合いだけでは、

「その問題は解決した」

「まだ解決していない」

という争いが起こることがあります。

離婚協議書に清算条項を記載しておけば、合意内容を書面で確認できます。

清算条項を入れる前に注意すべきこと

清算条項にはメリットがありますが、安易に入れることはおすすめできません。

なぜなら、清算条項によって、自分が請求できる可能性のある権利まで放棄することになりかねないからです。

財産をすべて確認していますか?

離婚時の清算条項で特に注意したいのが財産分与です。

夫婦の財産には、

・預貯金

・不動産

・自動車

・生命保険

・株式

・投資信託

・退職金

などがあります。

ところが、離婚を急ぐあまり、夫婦の財産を十分に確認しないまま離婚協議書を作成してしまうケースがあります。

その後になって、

「配偶者名義の預金があった」

「知らない証券口座が見つかった」

「生命保険の解約返戻金を確認していなかった」

ということが分かる場合があります。

清算条項を設ける前には、夫婦の財産をできる限り正確に確認することが重要です。

関連記事
離婚時の財産分与について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ 財産分与とは?対象になる財産・ならない財産を行政書士が解説

慰謝料について本当に解決していますか?

慰謝料についても注意が必要です。

たとえば、配偶者の不貞行為を理由に離婚する場合を考えてみましょう。

離婚時には精神的にも疲れており、

「とにかく早く離婚したい」

という気持ちになることがあります。

そのため、慰謝料について十分な話し合いをしないまま離婚協議書を作成することがあります。

その後、気持ちが落ち着いてから、

「やはり慰謝料を請求したい」

と考えるかもしれません。

しかし、離婚協議書に包括的な清算条項が入っている場合、後からの請求が問題になる可能性があります。

清算条項を入れる前には、慰謝料について請求するのか、請求しないのかを十分に検討する必要があります。

養育費も清算条項の対象になるの?

未成年の子どもがいる場合には、養育費について特に慎重な対応が必要です。

養育費は、夫婦だけのお金の問題とは性質が異なります。

子どもの生活や成長に関係する費用だからです。

離婚協議書では、

「今後一切の金銭を請求しない」

というような包括的な清算条項だけを記載するのではなく、養育費について別途明確に定めることが重要です。

たとえば、

・毎月の養育費

・支払日

・支払方法

・支払期間

・進学費用

・医療費

・事情変更があった場合の協議

などを定めます。

養育費について適切な条項を設けず、清算条項だけを記載することは避けた方がよいでしょう。

清算条項があれば絶対に追加請求できない?

では、清算条項があれば、どのような場合でも追加請求ができなくなるのでしょうか。

必ずしもそうとは限りません。

具体的な事情によっては、清算条項があっても問題となるケースがあります。

たとえば、

・相手が財産を意図的に隠していた

・重大な事実について虚偽の説明をしていた

・強迫などによって合意させられた

・清算条項の対象外となる事項がある

といった場合です。

ただし、

「清算条項があっても後から請求できることがある」

と簡単に考えるべきではありません。

一度署名・押印した離婚協議書の内容を後から争うことは、大きな負担になります。

そのため、離婚協議書に署名する前の確認が非常に重要です。

清算条項は「すべてを清算する」内容だけではない

清算条項というと、

「今後、お互いに一切の請求をしない」

という内容をイメージする方も多いかもしれません。

しかし、清算条項は必ずしも、夫婦間のすべての問題を一括して終了させる内容にしなければならないわけではありません。

離婚時の状況によっては、すでに解決した問題と、まだ話し合いが終わっていない問題が混在していることがあります。

たとえば、離婚そのものには合意しており、養育費についても金額や支払方法が決まっているものの、自宅の売却時期が決まっていないケースを考えてみましょう。

このような場合に、

「本協議書に定めるもののほか、甲乙間には何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する」

という包括的な清算条項を設けると、後になって解釈をめぐる問題が生じる可能性があります。

離婚協議書を作成する際には、何でも一律に清算するのではなく、

「何について解決したのか」

「何については今後も協議する必要があるのか」

を明確に区別することが重要です。

たとえば、財産分与について話し合いが終わっていないのであれば、財産分与を清算条項の対象から除外することも考えられます。

また、住宅ローンが残っている場合には、自宅を売却した後の残債をどのように負担するのか、売却によって利益が出た場合にどのように分配するのかなど、離婚時点では確定できない問題が残ることもあります。

このような事情があるにもかかわらず、インターネット上のテンプレートをそのまま使用して包括的な清算条項を設けることは慎重に考える必要があります。

大切なのは、清算条項を「入れるか、入れないか」という二者択一で考えないことです。

夫婦の状況に応じて、

「清算する問題」

「清算しない問題」

「将来あらためて協議する問題」

を整理し、それぞれを離婚協議書に反映させることが重要です。

離婚協議書は、一般的な文例を並べれば完成する書類ではありません。

夫婦によって財産状況や子どもの有無、住宅ローン、慰謝料などの事情が異なるからこそ、それぞれの状況に合った条項を作成する必要があります。

ケーススタディ① 離婚後に預金口座が見つかった

夫婦で財産分与について話し合い、離婚協議書を作成しました。

協議書には、

「本協議書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを確認する」

という清算条項がありました。

ところが離婚後、元配偶者が婚姻中に別の預金口座を持っていたことが判明しました。

このような場合、問題となるのは、

・相手が意図的に財産を隠していたのか

・離婚時にその財産を把握できたのか

・清算条項がどの範囲を対象としていたのか

などです。

単純に、

「清算条項があるから絶対に請求できない」

あるいは、

「隠し財産だから必ず請求できる」

とは判断できません。

離婚協議書を作成する前に財産を十分確認することが重要です。

ケーススタディ② 慰謝料を決めずに離婚した

夫の不貞行為が原因で離婚することになりました。

妻は早く離婚したかったため、慰謝料について十分な話し合いをせず、離婚協議書に署名しました。

協議書には包括的な清算条項が入っていました。

離婚後、妻は、

「やはり慰謝料を請求したい」

と考えました。

この場合、清算条項の内容や離婚協議の経緯などが問題になります。

離婚を急いでいる場合でも、

「後から考えればよい」

と安易に判断することはおすすめできません。

慰謝料を請求する可能性があるのであれば、清算条項を入れる前に整理しておく必要があります。

ケーススタディ③ 養育費を決めずに清算条項を入れた

未成年の子どもがいる夫婦が離婚しました。

離婚協議書には、

「今後、互いに一切の金銭を請求しない」

という内容が記載されていました。

しかし、養育費について具体的な取り決めはありませんでした。

このような離婚協議書は、将来的なトラブルにつながる可能性があります。

子どもがいる場合には、養育費を夫婦間の他の金銭問題と同じように扱うのではなく、独立した条項として具体的に定めることが重要です。

清算条項を入れる前のチェックリスト

清算条項を入れる前のチェックリスト

離婚協議書に清算条項を入れる前には、少なくとも次の点を確認しましょう。

□ 夫婦の預貯金を確認したか

□ 不動産の名義や価値を確認したか

□ 生命保険や学資保険を確認したか

□ 株式や投資信託を確認したか

□ 退職金が財産分与の対象になる可能性を検討したか

□ 自動車などの財産を確認したか

□ 住宅ローンの残高を確認したか

□ 婚姻費用の未払いがないか

□ 慰謝料を請求するか検討したか

□ 養育費について具体的に決めたか

□ 子どもの進学費用や医療費について検討したか

□ 夫婦間の貸し借りや立替金がないか

注意
一つでも整理できていない問題がある場合には、包括的な清算条項を入れる前に慎重に検討する必要があります。

離婚協議書は全体のバランスが重要

清算条項だけを正しく作成すれば、離婚協議書が完成するわけではありません。

離婚協議書では、

・財産分与

・慰謝料

・養育費

・面会交流

・住宅ローン

・年金分割

・公正証書の作成

など、さまざまな問題を整理する必要があります。

重要なのは、それぞれの条項が矛盾せず、夫婦の合意内容が正確に反映されていることです。

インターネット上には離婚協議書のテンプレートや文例が多数掲載されています。

しかし、他人の離婚協議書をそのまま使用しても、自分たちの事情に合っているとは限りません。

特に清算条項は、離婚後の請求に影響する可能性があるため、慎重な確認が必要です。

清算条項を含む離婚協議書を公正証書にする場合

離婚時の約束をより確実な形で残す方法として、公正証書を作成することがあります。

離婚公正証書では、養育費や慰謝料、財産分与などの金銭の支払いについて定めることができます。

特に、一定の要件を満たした強制執行認諾文言を設けることで、金銭の支払いが滞った場合に、裁判手続を経ずに強制執行を申し立てられる可能性があります。

参考情報
離婚に関する制度や手続については、法務省の公式サイトでも案内されています。
▶ 法務省「離婚を考えている方へ」

ただし、離婚協議書を公正証書にすれば、どのような内容でも問題がなくなるわけではありません。

公正証書を作成する場合でも、

・財産分与の対象となる財産を確認したか

・慰謝料について合意しているか

・養育費の金額や支払期間が明確か

・住宅ローンなどの問題が残っていないか

・清算条項の対象範囲が適切か

といった点を事前に整理する必要があります。

特に注意したいのは、清算条項と他の条項との関係です。

たとえば、養育費について将来の事情変更に応じて協議する条項を設けている一方で、

「今後、甲乙は互いに一切の金銭請求をしない」

という包括的な清算条項を設けると、離婚協議書全体の内容が分かりにくくなる可能性があります。

また、子どもの進学費用や高額な医療費など、離婚時点では具体的な金額を決めることが難しい費用もあります。

このような将来発生する可能性のある問題については、

「必要が生じた場合には、その負担について父母が協議する」

などの条項を設けることも考えられます。

その場合には、清算条項との関係についても確認しておく必要があります。

離婚公正証書を作成するときは、養育費や財産分与などの個別の条項だけを見るのではなく、最後に記載される清算条項まで含めて、書面全体に矛盾がないかを確認することが重要です。

函館市で離婚協議書の作成を検討している方へ

離婚協議書は、離婚時の約束を書面として残す重要な書類です。

その中でも清算条項は、離婚後の金銭請求やトラブルに関係する重要な条項の一つです。

「テンプレートに書いてあったから」

「一般的な文例だから」

という理由だけで入れるのではなく、

・どの問題が解決しているのか

・どの問題が残っているのか

・将来的な請求の可能性はないか

を確認したうえで作成する必要があります。

小川たけひろ行政書士事務所では、北海道函館市を中心に、離婚協議書や離婚公正証書の作成サポートを行っています。

夫婦で話し合った内容を整理し、離婚後のトラブルをできる限り防ぐための書面作成をサポートいたします。

「清算条項を入れても大丈夫なのか分からない」

「財産分与や養育費について、どこまで離婚協議書に書けばよいのか分からない」

「インターネットのテンプレートを使ってよいのか不安」

という方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

清算条項とは、離婚協議書に定めた内容以外には、夫婦間に請求すべき金銭などがないことを確認するための条項です。

清算条項を設けることで、離婚後の金銭トラブルや蒸し返しを防ぐ効果が期待できます。

一方で、財産分与や慰謝料などについて十分に確認しないまま清算条項を入れてしまうと、後から問題になる可能性があります。

大切なのは、清算条項だけを見るのではなく、離婚条件全体を整理することです。

離婚協議書に署名・押印する前に、

「本当にすべての問題が解決しているのか」

「まだ話し合うべき問題は残っていないか」

を確認しましょう。

離婚協議書は、離婚するためだけの書類ではありません。

離婚後の生活を安心して始めるための書類でもあります。

だからこそ、清算条項についても、その意味を十分に理解したうえで定めることが重要です。

離婚協議書・公正証書作成サポート

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