離婚協議書は本当に必要? ~離婚後に困るのは実はお金より「記憶」です~

離婚協議書作成をイメージした書類とペン

「私たちは揉めていないので、離婚協議書までは必要ないと思っています。」

離婚相談の際、このようなお話をいただくことがあります。

確かに、夫婦で十分に話し合いができていて、お互いに納得して離婚するのであれば、わざわざ書面を作らなくても問題ないように思えるかもしれません。

しかし、私は離婚に関する業務に携わる中で、離婚後のトラブルの多くは、お金の問題そのものではなく、「記憶の問題」から生じていると感じています。

離婚する時には確かに合意していたはずなのに、数か月後、あるいは数年後になると、

「そんな約束だったかな?」

「そういう意味で言ったつもりではない」

「そんな話は聞いていない」

という状況になってしまうのです。

相手は、嘘をつこうとしているわけではありません

(そうじゃない場合もたびたびありますが…。)

ただ、時間が経つと記憶は曖昧になります。

そして、自分に都合の良いように解釈してしまうこともあります。

離婚協議書は、相手を信用していないから作るものではありません。

(もちろん、信じてないから作ることも多々あります。)

でも、本当の目的は、将来の誤解や記憶違いから、お互いを守るために作るものです。

今回は、離婚協議書を作らなかった場合に起こりやすいトラブルについてお話ししたいと思います。

目次

離婚した瞬間から「他人」になるという現実

婚姻中は夫婦です。

多少の行き違いがあっても、その場で話し合いをすることができます。

しかし、離婚後は違います。

離婚した瞬間から、夫婦は法律上の他人になります。

元夫婦という関係になります。

以前ほど気軽に連絡を取れなくなりますし、新しい生活も始まります。

新しい仕事、再婚、転居など、生活環境、新しい交際相手など大きく変化していきます。

離婚時には誠実だった人でも、数年後には事情が変わっていることがあります。

だからこそ、離婚時に合意した内容を形として残しておくことが重要なのです。

トラブル① 養育費が支払われなくなる

離婚後のトラブルとして最も多いものの一つが養育費です。

離婚時には、

「子どものためだから、きちんと払うよ」

と約束していたとしても、時間が経つと状況は変わります。

転職したり、再婚したり、収入が減少したりすることもあります。

その結果、

「そんな金額だったかな」

「高校卒業までだったよね」

「大学進学までは聞いていない」

といった話になることがあります。

問題は、本当に約束していなかったのか、それとも忘れてしまったのかが分からなくなることです。

養育費については、

・毎月の金額

・支払日

・支払方法

・いつまで支払うのか

・進学時の費用をどうするのか

・病気やケガをしたら医療費の負担は?

などを明確にしておく必要があります。

離婚協議書は、その約束を目に見える形にしてくれます。

トラブル② 面会交流の認識が食い違う

離婚時には、

「子どもには自由に会っていいよ」

という話になることがあります。

しかし、この「自由に」という言葉ほど解釈が分かれるものはありません。

ある人は、

「毎週会える」

と考えるかもしれません。

別の人は、

「事前に相談して都合が合えば会える」

という意味で考えているかもしれません。

どちらも自分は正しいと思っています。

しかし、前提が違っているのです。

また、相手方の父母(子供からすれば「おじいちゃん」「おばあちゃん」まで会うことを認めるのか?や
相手との旅行やお泊りを認めるのか?

など、面会交流に関しては様々な展開が考えられます。

しかし、離婚後に、

「会わせてもらえない」

「約束が違う」

というトラブルになるケースは少なくありません。

面会交流については、

・頻度

・時間

・場所

・宿泊の可否

・学校行事への参加

・祖父母まで認めるのか

などについて、できる限り具体的に決めておくことが望ましいでしょう。

トラブル③ 財産分与の話が蒸し返される

離婚時には、

「預金は半分ずつにしよう」

という簡単な話し合いで終わることがあります。

しかし、後になって、

「生命保険はどうだったのか」

「退職金は対象だったのか」

「自動車は財産分与に含まれていたのか」

などの問題が出てくることがあります。

離婚当時は気にならなかったことでも、時間が経ってから気になることがあります。

また、友人や親族から

「それはもらえるはずだったんじゃない?」

と言われて考えが変わることもあります。

離婚協議書を作成しておけば、どの財産をどのように分けるのかが明確になります。

後から争いになるリスクを減らすことができるのです。

トラブル④ 慰謝料や解決金の支払い条件が曖昧

例えば、

「慰謝料として100万円を支払う」

という約束をしたとします。

しかし、

・いつ支払うのか

・一括なのか分割なのか

・遅れた場合はどうするのか

を決めていなければ、実際の支払い段階で問題が生じることがあります。

契約の世界では、「何をするか」だけではなく、「どのようにするか」も重要です。

離婚協議書は、約束の内容だけではなく、実現方法まで整理する役割があります。

トラブル⑤ 「そんな約束はしていない」と言われる

最も深刻なのは、このケースです。

離婚時には確かに話し合ったはずなのに、

「そんな約束はしていない」

と言われてしまうのです。

人の記憶は驚くほど曖昧です。

(もちろん、覚えていてもトボケている場合もあります。)

私たちは、自分では正確に覚えているつもりでも、実際には少しずつ記憶を書き換えています。

離婚から数年経過すると、その傾向はさらに強くなります。

特に、お金や子どもに関する問題は、自分に都合の良い形で記憶してしまうこともあります。

離婚協議書があれば、「当時、こういう内容で合意していた」

ということを客観的に確認できます。

それは相手を責めるためではなく、双方の記憶を補うためのものなのです。

離婚協議書は「信用していない証拠」ではない

離婚協議書の作成を提案すると、

「相手を疑っているみたいで気が引ける」

という方がいます。

しかし、本当にそうでしょうか。

家を購入するときは契約書を作ります。

賃貸住宅を借りるときも契約書を作ります。

お金を借りるときも借用書を作ります。

それは相手を信用していないからではありません。

大切な約束だからこそ、後で誤解が生じないように書面に残すのです。

離婚協議書も同じです。

むしろ、将来の争いを避けるための思いやりと言えるかもしれません。

確実を求めるなら公正証書という選択肢もある

さらに安心を求めるのであれば、公正証書にする方法があります。

特に養育費や慰謝料など継続的な支払いがある場合には、公正証書を作成することで、将来の未払いリスクに備えることができます。

ただし、公正証書の効果を十分に活かすためには、その前提となる離婚条件が明確になっていることが大切です。

どのような内容を定めるべきかは、それぞれの家庭の事情によって異なるため、専門家の助言を受けながら内容を整理することで、より実効性のある書面を作成することができます。

まとめ

離婚後に起こるトラブルは、お金が原因だと思われがちです。

しかし実際には、

「そんな約束だったかな」

「そういう意味じゃなかった」

という記憶のズレから始まることが少なくありません。

離婚時には、お互いに内容を理解しています。

ところが、1年後、3年後、5年後も同じとは限らないのです。

だからこそ、約束は形に残しておくべきです。

離婚協議書は、相手を縛るためのものではありません。

未来のお互いを守るためのものです。

離婚後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、離婚条件は書面として残しておくことをおすすめします。

小川たけひろ行政書士事務所では、函館市を拠点に、離婚協議書作成や離婚公正証書作成のサポートを行っています。

函館市・北斗市・七飯町など道南地域からのご相談に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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