「離婚したいという気持ちは固まっているけれど、相手に話を切り出す前に何をしておけばよいのだろう」
「感情的になって離婚を切り出して、後から後悔することにならないだろうか」
「離婚後の生活を考えると不安で、なかなか話を切り出せない」
離婚を考えている方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
夫婦関係が悪化すると、「一刻も早く離婚したい」と考えてしまうことがあります。
しかし、十分な準備をしないまま離婚を切り出してしまうと、財産の状況が分からなくなったり、相手との話し合いが難しくなったり、離婚後の生活に困ったりする可能性があります。
特に、未成年の子どもがいる場合、夫婦で住宅を所有している場合、住宅ローンが残っている場合、預貯金や保険などの財産が複数ある場合には、離婚を切り出す前の準備が重要です。
この記事では、離婚を切り出す前に確認しておきたいことや準備しておきたいことを、チェックリスト形式で行政書士がわかりやすく解説します。
これから離婚について夫婦で話し合おうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
離婚は「切り出してから考える」のではなく事前準備が大切
離婚を決意すると、できるだけ早く相手に自分の気持ちを伝えたいと考える方もいるでしょう。
しかし、離婚を切り出した後も、夫婦の生活がこれまでと同じように続くとは限りません。
相手が離婚に反対することもあります。
夫婦関係がさらに悪化することもあります。
場合によっては、どちらかが自宅を出て別居を始めることもあるでしょう。
そのため、離婚を切り出してから、
「預貯金がいくらあったのか分からない」
「住宅ローンの契約内容を確認できない」
「離婚後の生活費を考えていなかった」
「子どもの生活について何も決めていなかった」
と慌てることがないように、事前に準備しておくことが大切です。
離婚を切り出す前に、少なくとも次の点について確認しておきましょう。
離婚を切り出す前の基本チェックリスト
□ 離婚後の生活を具体的に考える
□ 夫婦の財産を確認する
□ 住宅や住宅ローンの状況を確認する
□ 自分の収入と支出を確認する
□ 子どもの生活について考える
□ 必要な資料を確認する
□ 離婚の原因に関する資料を整理する
□ 別居する場合の準備をする
□ 離婚条件の優先順位を決める
□ 離婚後の手続きを確認する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.離婚後の生活を具体的に考える
最初に考えておきたいのが、離婚後の生活です。
離婚すること自体が目的になってしまい、その後の生活について十分に考えていない方もいます。
しかし、離婚後は住居、生活費、仕事、子どもの生活など、さまざまな環境が変わる可能性があります。
離婚を切り出す前に、次の点を考えておきましょう。
離婚後の生活チェックリスト
□ 離婚後はどこに住むのか
□ 家賃はいくらまで支払えるのか
□ 毎月の生活費はいくら必要なのか
□ 現在の収入で生活できるのか
□ 転職や就職が必要になる可能性はあるか
□ 子どもの保育園や学校はどうするのか
□ 引っ越しが必要になるか
特に重要なのが、毎月の収入と支出を具体的に計算することです。
「何とかなるだろう」と考えるのではなく、家賃、食費、光熱費、通信費、保険料、教育費などを書き出してみましょう。
離婚後の生活を数字で確認することで、離婚前にどのような準備が必要なのかが見えてきます。
2.夫婦の財産を確認する
離婚を切り出す前に、夫婦にどのような財産があるのか確認しておくことも重要です。
婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産は、原則として財産分与の対象になります。
代表的な財産を確認してみましょう。
夫婦の財産チェックリスト
□ 預貯金
□ 不動産
□ 自動車
□ 生命保険や学資保険
□ 株式や投資信託
□ 退職金
□ 企業年金
□ 貴金属や高価な動産
注意したいのは、夫婦の財産が必ずしも自分名義になっているとは限らないことです。
たとえば、夫名義の預金口座であっても、婚姻期間中の収入から形成された財産であれば、財産分与の対象になる可能性があります。
離婚を切り出した後に夫婦関係が悪化すると、財産について確認することが難しくなる場合があります。
そのため、離婚を切り出す前に、どのような財産があるのか整理しておくことが大切です。
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財産分与の対象になる財産・ならない財産について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ 財産分与とは?対象になる財産・ならない財産を行政書士がわかりやすく解説
3.住宅と住宅ローンの状況を確認する
夫婦で自宅を所有している場合には、住宅と住宅ローンについて確認しておきましょう。
住宅・住宅ローンチェックリスト
□ 不動産の名義人は誰か
□ 住宅ローンの契約者は誰か
□ 連帯保証人はいるか
□ 連帯債務やペアローンになっていないか
□ 住宅ローンの残高はいくらか
□ 現在の住宅の価値はいくらか
□ 離婚後に誰が住む予定なのか
住宅については、「夫が家を出て妻と子どもが住み続ければよい」と簡単に考えることはできません。
住宅の所有名義と住宅ローンの契約は別の問題だからです。
また、住宅ローンが残っている場合には、住宅の現在価値がローン残高を上回っているのか、下回っているのかによっても対応が変わります。
離婚後も住宅ローンが残る場合には、金融機関との契約内容も確認する必要があります。
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住宅ローンが残っている状態で離婚する場合の注意点について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ 離婚で住宅ローンが残っている家はどうなる?財産分与・名義変更・住み続ける場合を行政書士が解説
4.自分の収入と支出を確認する
離婚後の生活を考えるためには、自分の経済状況を把握しておく必要があります。
収入・支出チェックリスト
□ 毎月の手取り収入
□ 賞与
□ 預貯金
□ 家賃
□ 食費
□ 光熱費
□ 通信費
□ 保険料
□ 自動車関係費
□ 子どもの教育費
□ 借入金やローン
現在、配偶者の収入に大きく依存している場合には、離婚後に自由に使えるお金が大きく減少する可能性があります。
反対に、現在は夫婦で負担している支出を、離婚後は一人で負担しなければならないこともあります。
まずは1か月に必要な生活費を計算し、離婚後の収入で生活できるのか確認してみましょう。
5.子どもの生活について考える
未成年の子どもがいる場合には、離婚後の子どもの生活についても考えておく必要があります。
子どもの生活チェックリスト
□ 子どもは誰と生活するのか
□ どこに住むのか
□ 転校や転園が必要になるか
□ 養育費をどのように決めるか
□ 面会交流をどのように行うか
□ 進学費用をどうするか
□ 医療費など特別な費用をどうするか
夫婦が離婚しても、親子関係がなくなるわけではありません。
離婚後も子どもが安定した生活を送れるように、離婚前から考えておくことが大切です。
特に、養育費については金額だけではなく、支払期間、支払方法、進学費用、病気やけがによる医療費などについても検討しておく必要があります。
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養育費の決め方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ 養育費はいつまで支払う?相場はいくら?離婚前に知っておきたい基本知識
6.必要な資料を確認しておく
離婚を切り出す前には、財産や収入に関する資料を確認しておくことも大切です。
確認しておきたい資料チェックリスト
□ 預金通帳
□ 給与明細
□ 源泉徴収票
□ 確定申告書
□ 住宅ローン返済予定表
□ 不動産関係書類
□ 生命保険証券
□ 証券会社の取引報告書
□ 年金関係書類
□ 自動車関係書類
すべての資料を集めなければ離婚できないというわけではありません。
しかし、離婚条件について具体的に話し合うためには、夫婦の財産や収入を確認できる資料が必要になる場合があります。
離婚を切り出した後では確認しにくくなる可能性もあるため、事前にどのような資料があるのか把握しておきましょう。
7.離婚の原因に関する資料を整理する
配偶者の不貞行為やDVなどが離婚の原因となっている場合には、関係する資料について確認しておくことも重要です。
離婚原因に関する資料チェックリスト
□ メールやSNSのやり取り
□ 写真
□ 録音データ
□ 診断書
□ 警察や相談機関への相談記録
□ 日記やメモ
ただし、証拠を集めるために違法な行為をしてよいわけではありません。
また、行政書士は、夫婦間の紛争について相手方と交渉したり、裁判手続きを代理したりすることはできません。
すでに夫婦間で深刻な対立が生じている場合や、慰謝料請求について争いがある場合には、弁護士への相談を検討する必要があります。
8.別居する場合の準備をする
離婚を切り出した後に、別居する可能性もあります。
そのため、別居を考えている場合には、事前に生活の準備をしておきましょう。
別居準備チェックリスト
□ 別居後の住居
□ 引っ越し費用
□ 毎月の生活費
□ 子どもの生活環境
□ 必要な家具や家電
□ 郵便物の受取方法
□ 勤務先への連絡
□ 公的手続き
感情的になって突然自宅を出てしまうと、その後の生活に困る可能性があります。
特に、収入が少ない場合や子どもと一緒に別居する場合には、生活費について十分に検討することが大切です。
9.離婚条件の優先順位を決める
離婚の話し合いでは、すべての希望がそのまま実現するとは限りません。
そのため、離婚を切り出す前に、自分が何を最も重視するのか整理しておきましょう。
離婚条件の優先順位チェックリスト
□ 絶対に譲れない条件を整理した
□ できれば実現したい条件を整理した
□ 話し合いによって譲歩できる条件を整理した
□ 金銭面で優先する条件を整理した
□ 子どもについて優先する条件を整理した
□ 離婚成立までの希望時期を考えた
たとえば、
「子どもの生活環境を変えたくない」
「自宅には住み続けたい」
「財産分与をきちんと決めたい」
「できるだけ早く離婚したい」
など、人によって優先することは異なります。
あらかじめ優先順位を決めておくことで、感情だけに流されず、離婚条件について冷静に考えやすくなります。
当事務所に相談のあった事例
以前、当事務所に、離婚を考えている女性から相談がありました。
相談者は、長年夫婦関係が悪化しており、「できるだけ早く離婚したい」と考えていました。
しかし、詳しく話を伺うと、夫婦には自宅があり、住宅ローンが残っていました。
また、預貯金や生命保険などの財産についても、相談者は詳しい内容を把握していませんでした。
そこで、すぐに離婚を切り出すのではなく、まず夫婦の財産、住宅ローン、離婚後の生活費などを整理することになりました。
確認を進めた結果、離婚後の生活に必要な金額や、夫婦で話し合うべき条件が明確になりました。
その後、相談者は自分の希望する条件を整理したうえで夫に離婚を切り出し、夫婦で話し合いを進めることができました。
このように、離婚を決意したからといって、すぐに相手に伝えることが最善とは限りません。
離婚後の生活まで考えて準備することが大切です。
※プライバシー保護のため、実際の相談内容をもとに一部内容を変更しています。
10.離婚後に必要な手続きを確認する
離婚が成立すると、さまざまな手続きが必要になる場合があります。
離婚後の手続きチェックリスト
□ 氏や戸籍に関する手続き
□ 住所変更
□ 健康保険
□ 年金
□ 児童扶養手当などの公的制度
□ 銀行口座やクレジットカード
□ 運転免許証
□ 自動車
□ 生命保険
□ 子どもの学校関係
離婚後に慌てることがないように、自分の場合にはどのような手続きが必要になるのか確認しておきましょう。
参考情報
離婚に関する制度や手続きについては、法務省のホームページでも確認できます。
▶ 法務省「離婚を考えている方へ」
離婚を切り出す前の最終チェックリスト
最後に、ここまで解説した内容をまとめます。
離婚を切り出す前の最終チェックリスト
【生活について】
□ 離婚後に住む場所を考えた
□ 毎月必要な生活費を計算した
□ 自分の収入を確認した
□ 引っ越し費用を確認した
【財産について】
□ 預貯金を確認した
□ 不動産を確認した
□ 保険を確認した
□ 株式や投資信託を確認した
□ 自動車を確認した
□ 住宅ローンを確認した
【子どもについて】
□ 離婚後の生活環境を考えた
□ 学校や保育園について考えた
□ 養育費について考えた
□ 面会交流について考えた
□ 進学費用について考えた
【資料について】
□ 預金通帳などを確認した
□ 収入関係の資料を確認した
□ 住宅ローン関係の資料を確認した
□ 保険関係の資料を確認した
□ 必要に応じて離婚原因に関する資料を整理した
【離婚条件について】
□ 自分が希望する条件を整理した
□ 絶対に譲れない条件を決めた
□ 話し合いによって譲歩できる条件を考えた
□ 離婚後に必要な手続きを確認した
すべての項目にチェックが入らなければ離婚を切り出してはいけないわけではありません。
大切なのは、自分が何を確認できていて、何がまだ決まっていないのかを把握することです。
よくある質問
Q.離婚を決めたら、すぐに相手に伝えたほうがよいですか?
必ずしもすぐに伝える必要はありません。
離婚後の生活、夫婦の財産、子どもの生活などについて何も確認しないまま離婚を切り出すと、その後の話し合いで困る可能性があります。
まずは、自分の状況を整理することが大切です。
Q.相手に知られずに離婚の準備をしてもよいですか?
離婚について考えるために、自分の収入や生活費、夫婦の財産などを確認することは重要です。
ただし、相手の財産を勝手に処分したり、違法な方法で情報を取得したりすることは避けなければなりません。
Q.離婚を切り出す前に離婚協議書を作れますか?
通常は、夫婦で離婚条件について話し合い、合意した内容を書面にまとめます。
そのため、離婚を切り出す前の段階では、まず自分が希望する条件を整理しておくことが大切です。
夫婦で合意できた場合には、離婚協議書を作成して内容を明確にしておくことをおすすめします。
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離婚協議書について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ 離婚協議書は本当に必要? ~離婚後に困るのは実はお金より「記憶」です~
Q.離婚について誰に相談すればよいですか?
相談内容によって異なります。
夫婦間ですでに争いが生じている場合や、相手との交渉、調停、裁判などが必要な場合には、弁護士への相談が適しています。
一方、夫婦で話し合った離婚条件を書面にまとめたい場合や、離婚協議書の作成について相談したい場合には、行政書士に相談する方法があります。
離婚を切り出す前に準備することが将来の安心につながります
離婚を考える理由や夫婦の事情は、一人ひとり異なります。
そのため、「これだけ準備すれば絶対に大丈夫」という方法があるわけではありません。
しかし、何も準備しないまま感情的に離婚を切り出してしまうと、後になって夫婦の財産を把握できなかったり、住宅ローンの問題が判明したり、離婚後の生活費に困ったりする可能性があります。
離婚を切り出す前には、まず離婚後の生活を具体的に考え、夫婦の財産、住宅ローン、収入と支出、子どもの生活などを一つずつ確認することが大切です。
また、自分が希望する離婚条件について、「絶対に譲れないこと」「できれば実現したいこと」「話し合いによって譲歩できること」に分けて整理しておくと、夫婦での話し合いを進めやすくなります。
そして、夫婦で離婚条件について合意できた場合には、口約束だけで終わらせず、離婚協議書などの書面に残しておくことをおすすめします。
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