勝手に離婚届を出されないための対処法

離婚の意思がないのに、相手に勝手に離婚届を提出されてしまう――そんな事態を防ぐ方法をご存じでしょうか?
夫婦喧嘩の勢いや、一時的な感情で離婚届を書いてしまったものの、後から「やっぱり離婚は避けたい」と思うこともあるでしょう。
しかし、相手が離婚届を提出してしまえば、役所では書類に不備がない限り受理され、離婚が成立してしまいます。
そうならないために有効なのが「離婚届不受理申出」の手続き。本記事では、この手続きの詳細と、特に提出すべきケースについて解説します。
離婚届不受理申出とは?
夫婦喧嘩の勢いで「離婚届」を書いて相手に渡してしまったが、後で冷静になって「やっぱり離婚はしたくないから止めておこう」とか「離婚してしまったら生活費ももらえないかも」と思っても、相手にいつ「離婚届」を勝手に出されるか、不安で何も手に付かない方もいるかもしれません。
このままではご自身が離婚したくなくても、相手が離婚届を出せば離婚が成立してしまいます。そのような場合には、「離婚不受理申出」という方法で対処できます。
離婚届は双方に離婚意思があって受理されるべきですが、提出先である役所にとっては、書面に不備さえなければ、たとえ夫婦の一方が離婚届を勝手に作成したものであっても受理し、それによって離婚が成立してしまいます。
ちなみに、離婚届の配偶者の署名捺印を偽造して役所に提出することは,犯罪行為です。役所に提出する目的で離婚届を偽造するのは有印私文書偽造罪,偽造離婚届を実際に役所に提出するのは偽造有印私文書行使罪,戸籍に虚偽の記録をさせるのは電磁的公正証書原本不実記録罪という犯罪になります。
離婚届が受理されてしまうと、役所の窓口に行って「私は離婚する気などなかったのに!」と主張してもあとの祭り。離婚届が受理されてしまった場合、離婚を無効にして協議離婚の記載のある戸籍を訂正するには調停や裁判などの手続きが必要で、手間も労力もかかり非常に大変なことになります。
このような事態になるのを防ぐために、『離婚届の不受理申出』という手続きがあるのです。この不受理申出を提出しておくと離婚届は受理されなくなりますので、不当に離婚届を出される怖れがある方は離婚届の不受理申出を提出しておくことをおすすめします。
離婚届の不受理申出をしておくべき3つの場合
具体的に離婚届の不受理申出を提出しておいた方が良い3つの場合を以下に列挙します。
① 子供の親権や面会交流について取り決めていない
② 慰謝料を支払ってもらいたい
③ 婚姻費用(生活費)の支払いを止められたくない
① 子供の親権や面会交流について取り決めていない
夫婦に子供がいる場合、親権をどちらが持つのかを決めなければなりません。親権者をどちらにするのかで子供の成長に大きな影響を与えるからです。
夫婦の話し合いもなく、離婚届の親権者欄にどちらかの名前を書いて提出されてしまうことは子供の将来のためにも避けなければなりません。
② 慰謝料を支払ってもらいたい
離婚後も慰謝料を請求することはできますが、離婚後の交渉では、一般的慰謝料の相場よりも高い慰謝料を請求することは困難です。
いったん離婚が成立した後には、相手方がなかなか慰謝料の話合いに応じないケースや、相手の所在が不明となって話し合い自体が困難になるケースも考えられます。
そして運良く話し合いに応じたとしても額をかなり低く値切られることがありますので、慰謝料について取り決めをするのであれば、離婚が成立する前にするべきだからです。
また、慰謝料には離婚が成立した日から3年を経過すれば請求できなくなる消滅時効というものに注意しなければなりません。
このような状況が考えられるので、勝手に離婚届を提出されてしまう怖れがある場合は離婚届不受理申出をしておくべきです。
③ 婚姻費用(生活費)の支払いを止められたくない
婚姻費用とは、具体的には別居中に支払われる生活費のことで、収入が多い方から収入の少ない方に支払われるものです。この婚姻費用の支払いは、離婚後には発生しません。そのため、婚姻費用を支払う側が、離婚届が受理されたこと(=離婚成立)を理由に、婚姻費用の支払いを拒否してくる怖れがあります。
離婚届の不受理申出書の提出方法
離婚届不受理申出書の提出は、原則として届出人の本籍がある市区町村の役所となっていますが、本籍地以外の市区町村に提出することも可能です。どこの役所から提出しても、本籍地のある市区町村役場へ送付されることになっているからです。
ただし、時間的余裕のない、切羽詰まった場合であれば、本籍地のある役所で提出する方が安全かもしれません。申出書の用紙は市役所等の戸籍を扱う係で入手できます。また提出に手数料などの費用はかかりません。
提出には本人確認ができるもの(免許証、パスポートなど、顔写真の付いたもの)と、印鑑(認印でも可) が必要です。
離婚届不受理申出の取り下げ
離婚不受理申出書を提出した後で、夫婦がお互い離婚に同意した場合には、申出をした本人が離婚届を提出するのであれば、その離婚届は受理されることになります。
相手方を特定した不受理申出であれば、その効力もなくなります。また相手方を特定しない不受理申出をしていた場合(離婚届は、夫婦以外に、夫婦の親族等が代理で提出する場合があるため相手方を特定しないでおく)、再婚した後もその効力は継続しますので注意が必要です。したがって、必要がなくなった「不受理申出」は、すみやかに取り下げましょう。
まとめ
離婚届不受理申出は、相手に勝手に離婚届を出されるリスクを防ぐ重要な手続きです。離婚は双方の合意が必要ですが、役所は書類の形式的な要件を満たしていれば受理してしまいます。
一度受理されてしまうと、離婚を無効にするために裁判などの手続きが必要となり、大きな負担がかかることになります。
特に、①子どもの親権や面会交流の取り決めができていない場合、②慰謝料の請求を考えている場合、③婚姻費用(生活費)の支払いを続けてもらいたい場合には、この申出をしておくべきです。手続きは本籍地のある市区町村役場で行うことができ、本人確認書類と印鑑があれば無料で申請可能です。
また、不受理申出を提出後、夫婦双方が正式に離婚に合意した場合は、取り下げることも可能です。大切な権利を守るためにも、状況に応じて適切な対処を行いましょう。
小川たけひろ行政書士事務所では、離婚届の証人代行、離婚協議書や公正証書の作成をサポートさせていただいております。
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