離婚協議書が無効になるケースとは?作成時の注意点を解説

離婚時に夫婦間で取り決めた内容を明文化した「離婚協議書」は、離婚後のトラブルを防ぐために重要な役割を果たします。しかし、作成した離婚協議書が無効と判断されてしまうケースもあります。本記事では、離婚協議書が無効となる主な原因や、適切な協議書を作成するためのポイントについて解説します。
離婚協議書とは?
離婚協議書とは、夫婦が離婚に際して合意した条件を記載した文書です。一般的に以下のような内容が含まれます。
- 財産分与の内容(不動産・預貯金・保険など)
- 養育費の支払い(金額・期間・支払い方法)
- 面会交流のルール(頻度・場所・時間など)
- 慰謝料の有無と支払い条件
- 年金分割に関する合意
- 離婚後の生活に関する取り決め(例:住所変更時の通知義務)
こうした内容を明確にすることで、後々のトラブルを回避し、円滑な離婚手続きを進めることができます。しかし、作成した離婚協議書が無効になるケースもあるため、注意が必要です。
【参考記事】
離婚協議書について:メリット・デメリット、作成のポイントと記載事項(記載例付き)を解説
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離婚協議書が無効になるケースとは?
では、実際にどんな場合に離婚協議書が無効になってしまうのでしょうか。
離婚協議書の全部が無効になるケース
配偶者または第三者に騙されたり脅されて離婚届を書いた
離婚が無効になったり、取り消されると、離婚を前提として作られた離婚協議書も無効になります。
たとえば、夫婦の一方が他方の合意なしに離婚届を提出してしまったような場合は離婚が無効になります。また、相手や第三者から騙されたり脅されて離婚届を提出してしまった場合には、離婚を取り消すことができます。
具体例
- 「離婚しなければ仕事を辞めさせる」と脅されて離婚届に署名した
- 「暴力を振るわれたため」恐怖で離婚に合意した
- 「借金があるから離婚してくれ」と本当は愛人と再婚したい夫が妻を騙した
ただし、こうした場合でもすぐには離婚が無効や取消しになるわけではなく、裁判所において手続きが必要になります。
離婚協議書が部分的に無効になるケース
相手が勝手に離婚届を提出したり、相手や第三者から騙されたり脅されたりして離婚が離婚が無効になったり、取消しになった結果、離婚協議書の全体が無効になるケースのほかに、離婚協議書の一部が無効になるケースがあります。
公序良俗に反する内容が含まれている
離婚協議書に記載された内容が公序良俗(社会の倫理や秩序)に反すると判断された場合、その部分や全体が無効とされる可能性があります。
具体例
- 「元配偶者は今後一切再婚しないこと。また、交際や再婚が発覚した場合は慰謝料を支払うこと」
- 「親権を完全に放棄し、子どもに一切関与しない代わりに財産をすべて譲る」
- 「養育費を受け取らないことを条件に、子どもとの面会交流を一切禁止し、いかなる場合も連絡を取らない」
このような条件は、当事者同士の合意があったとしても、法的に無効とされる可能性が高いです。特に、親権や養育費に関する条項は、子どもの福祉を最優先とする法律の観点から問題があり、このような合意は認められません。
こうした合意は、無効となる可能性が高いため、適切な内容を記載することが重要です。
曖昧な表現で作られた合意事項
離婚協議書などのいわゆる契約書といわれるものは、当事者以外の第三者が読んでも誰もが同じ解釈になるものを作らなければなりません。人によっていろいろな解釈ができる文言の場合には無効とされる可能性が高いです。
書面の不備や署名・押印の欠落
離婚協議書は書面で作成することが望ましいですが、以下のような不備がある場合、無効と判断されることがあります。
具体例
- 夫婦の一方の署名がない
- 実印や認印が押されていない
- 日付が記載されていない
- 書類の一部が欠落している
こうした場合、離婚協議書の法的効力が認められない可能性があるため、作成時には細心の注意を払う必要があります。
公正証書にしていないと強制執行できない
「離婚協議書が無効になるケースを踏まえて離婚協議書を作成したから安心!」というわけではありません。ネットのひな形などをそのまま使用する方に多いのですが、離婚協議書に養育費や慰謝料、財産分与の取り決めをしても、それだけでは万が一の場合、相手の給与や財産に強制執行をすることはできません(ここを勘違いしている方が非常に多いです)。
養育費や慰謝料など金銭の支払いに関する取り決めは、公正証書として残しておかなければ、強制執行をすることはできません。
公正証書にしない場合のリスク
- 相手が養育費や慰謝料を支払わなくなった際に強制執行できない
- 財産分与の約束が守られなくなる可能性がある
公正証書を作成しておけば、支払いが滞った際に裁判を経ずに強制執行が可能になります。
無効にならないためのポイント
離婚協議書を無効にしないためには、以下のポイントを押さえて作成することが重要です。
- 法的に有効な内容を記載する
- 公序良俗に反する条項を含めない
- 財産分与や養育費について、適切な内容を記載する
- 夫婦双方が合意のもとで作成する
- 一方的な強要や脅迫がないことを確認する
- 冷静な状態で話し合い、納得の上で署名する
- 書面の形式を整える
- 夫婦双方の署名・押印を忘れずに行う
- 日付を記載し、修正のない状態で作成する
- 公正証書として作成する
- 養育費や慰謝料などの金銭に関する取り決めは、公正証書にして強制執行可能な状態にする
- 専門家に相談する
- 行政書士や弁護士に依頼し、法的に問題のない内容になっているか確認する
まとめ
離婚協議書は、離婚後のトラブルを防ぐために重要な書類ですが、作成方法を誤ると無効になってしまう可能性があります。公序良俗に反する内容や法律違反がある場合、強要や脅迫による合意、不備のある書類、強制執行ができない状態などが無効の原因となります。
無効を防ぐためには、適切な内容を記載し、双方が納得の上で作成したうえで、公正証書にすることが重要です。専門家のサポートを受けながら、確実な手続きを進めることをおすすめします。
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