離婚時の「財産分与」|金銭以外の財産はどう分ける?不動産からペットまで
離婚時に取り決めることのひとつに財産分与があります。
財産分与は、結婚生活で夫婦が築き上げた共有の財産を離婚時に清算することです。
財産分与と聞くと、現金や預貯金など金銭をイメージすることが多いかもしれませんが、結婚生活の中で築き上げてきた財産は現金や預貯金だけではありません。
不動産や自動車、家具や電化製品、保険、ペットにいたるまで、財産分与の対象になります。
では、これら金銭以外の財産はどのように分与するのでしょうか。
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- 1. 基本は価値を現金に換算して評価する
- 2. 不動産に関する財産分与
- 2.1. ローンの負担のない不動産を所有している場合
- 2.2. ローン負担のある不動産を所有している場合
- 2.2.1. ローンよりも不動産の価格が高い場合
- 2.2.1.1. 不動産を売却してローンの残債を返済し、残りを夫婦で分け合う
- 2.2.1.2. 夫婦の一方が不動産を取得するケース
- 2.2.2. 不動産の価格よりローンの残高が上回っている(オーバーローン)の場合
- 3. 動産(車や家財道具)に関する財産分与
- 4. 有価証券に関する財産分与
- 5. 生命保険・個人年金・学資保険に関する財産分与
- 5.1. 生命保険
- 5.2. 個人年金
- 5.3. 学資保険
- 6. ペットをどう扱うのか?
- 7. まとめ
基本は価値を現金に換算して評価する
現金や預貯金などは分与する割合が決まればそのまま分けることができますが、不動産や自動車など金銭以外のものについては、基本的にはその価値を現金に換算して評価することが多いです。
不動産に関する財産分与
不動産に関する財産分与については、ローンの負担が無い場合とローンの負担がある場合について分けて考える必要があります。
ローンの負担のない不動産を所有している場合
この場合、まずは対象の不動産を夫婦のどちらかが取得するのか、もしくは売却するのかを話し合う必要があります。
夫婦のどちらかが不動産に居住し続ける場合には、取得する側が、他方に分与割合に応じて対価を支払うことになり、売却するのであれば、売却益を分与割合に応じて分けることになります。
また、不動産を評価するには購入価格ではなく時価でおこないます。
時価は不動産業者などに依頼し、査定書を作成してもらうという方法で算定が可能です。
また物件が高額で査定によって財産分与の価格が大きく変わってくるような物件は、費用がかかりますが、不動産鑑定士に依頼する必要もあるでしょう。
なお、固定資産税の納税通知書を見れば、不動産の評価額が記載されていますが、この評価額は、役所が課税するための評価額で、時価よりも低い場合が多いので、財産分与の算定資料としては参考程度にしておくべきでしょう。
ローン負担のある不動産を所有している場合
ローンが残っている場合の財産分与については、2つの場合に分けて考える必要があります。
ローンよりも不動産の価格が高い場合
不動産にローンが残っている場合、その価格からローンの残高を差し引いた金額が財産分与の対象となります。
そして、この場合、財産分与の方法として次の2つが考えられます。
不動産を売却してローンの残債を返済し、残りを夫婦で分け合う
不動産の価格が、ローンの残高を上回っている場合、不動産を売却して売却益からローンの残金を支払い、残った金額を夫婦で分けるという方法があります。
ケース設定
・不動産の価格 2000万円
・ローンの残高 1000万円
・財産分与の割合 夫50% 妻50%
このようなケースでは、
不動産の価格からローンの残債を引き算して、残りを夫婦50%ずつ分配します。
2000万円ー1000万円=1000万円
1000万円×夫50%=500万円
1000万円×妻50%=500万円
夫婦の一方が不動産を取得するケース
離婚後、夫婦のどちらかが不動産に住み続けることになった場合には、ローンの残額を差し引いた金額に分与割合を掛けた額を相手に支払い、引き続き住み続ける方が残りのローンを支払っていくという方法です。
ケース設定
・不動産の価格 2000万円
・ローンの残高1000万円
・財産分与の割合 夫50% 妻50%
・夫が不動産を取得
2000万円-1000万円=1000万円
1000万円×妻50%=500万円
500万円を妻に分与して、夫が不動産を取得し、ローンの残金を返済する。
不動産の価格よりローンの残高が上回っている(オーバーローン)の場合
では、不動産の価格よりローンの残高が上回っている、いわゆる「オーバーローン」の場合、どのように財産分与を行うのでしょうか。
基本的に、オーバーローンの状態で不動産を持っている場合には、オーバーローンの部分については財産分与ができません。
理由は、財産分与の目的は“財産を分配すること”であり、オーバーローン部分は財産ではなく負債として扱うからです。
ただし、オーバーローンの部分については財産分与の対象外ですが、不動産そのものについては財産分与の対象とすることが可能です。
オーバーローンの不動産を財産分与の対象とした場合、どのように分けるのかは、夫婦が話し合って決めることになります。
オーバーローンの不動産を財産分与する場合の方法としては次のような方法が考えられます。
- 不動産を売却してローンを返済する
- 夫婦のどちらかが対象不動産に住み続け、ローンを返済していく
しかし、どちらの方法も夫婦2人だけで進めていくことはできず、金融機関の承認が必要など、交渉や面倒な手続きが必要となります。
そのため、専門家などにアドバイスをもらいながら進めて行くことが良いかもしれません。
【参考記事】
ローン付の不動産の財産分与については下記の記事で詳しく解説しています。
ローンが残る不動産をどう扱う?複雑なケースをわかりやすく解説!
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動産(車や家財道具)に関する財産分与
車や家財道具などいわゆる動産の財産分与についてはどのように行うのでしょう。
こういった動産についても、時価で評価がおこなわれます。時価の算出にあたっては、専門業者による査定や中古市場での評価額を参考にしていきます。
たとえば、車であれば、中古車の価格相場を参考に考えたり、家具や電化製品などの財産も、できる限り中古市場の価格を参考に金額を算出していきます。
しかし、値が張らないものや古くなった家具や電化製品は、売却しても大きな額にはならないので、わざわざ手間をかけて査定を依頼たり、中古市場をチェックしなくても、欲しいものを話し合いで分配したほうが良いかもしれません。
実際、欲しいものを話し合いで取り決めていることが多く、話し合いで厳密に価値を換算をすることはほとんどありません。
有価証券に関する財産分与
株や国債、社債、ゴルフ会員権なども財産分与の対象となります。
株式などは流動性が高く、常に評価額も上下し、売買も頻繁にされますので、どの時点でその価値を確定させるかについて、トラブルになりやすいポイントです。
また、保有株式等が多ければ多いほど、評価のタイミングによって違いが出るので、見極めが重要になってきます。
基本的に、これら有価証券は、政治や経済情勢など外部の要因によって、評価額が大きく変動したり、一日の内でも上がり下がりを繰り返すこともあるため、評価のタイミングが非常に難しいのが現実です。
そのため、通常は離婚成立時の評価額を目安にします。
ただし、離婚前に別居をしていた場合は、別居が始まった時点での評価額を目安にする場合もあります。
分配方法としては、売却して売却益を分配するか、一方の配偶者が現物を保有して、相手に時価相当額の対価を支払うなどの方法が考えられます。
生命保険・個人年金・学資保険に関する財産分与
生命保険
生命保険は、別居時の解約返戻金が財産分与の対象となります。
この場合、保険料を納めている期間の方が結婚期間より長い場合は、結婚前に支払った保険料分を差し引いて計算します。
解約返戻金の額については、保険会社に問い合わせをするとわかります。
その際別居時の年月日を保険会社に伝え、その時点での返戻金額が知りたい旨を伝えましょう。
ただし、掛け捨て型生命保険の場合は財産分与の対象にはなりませんので注意が必要です。
また、保険料を一年間分など前払いしているケースがありますが、こういった場合は、前払い部分について財産分与の対象となります。
分配方法は、加入中であれば、解約して返戻金を分配するのが一般的ですが、生命保険を解約せずに継続し、受取人を配偶者から子どもなどに変更(通常は配偶者が受取人になっている場合が多いので)することもあります。
個人年金
個人年金も基本的には生命保険の場合と同じですが、分配方法として、途中解約した後、返戻金を分割するか、残された保険料の払い込みを2人で分割しておこない、受給開始になってから受給額を分割するといった方法で財産を分与する方法があります。
学資保険
学資保険の場合も基本的に生命保険の場合と同じです。
分配方法としては、解約返戻金の分割が考えられますが、子どものために積み立てた保険を解約したくないと考える方もいらっしゃいます。
そのような場合、契約者を変更して保険を継続する方法や、離婚後も引き続き契約者が保険料を払い続ける方法もあります。
ただし、通常給付される保険金の受取は契約者に指定されることが多いため、受取人の変更が可能かどうか保険会社への確認が必要です。
受取人の変更が可能であれば、速やかに変更の手続きをしておきましょう。
そのまま契約者が受取人となっていると、勝手に保険を解約されていることがあるためです。
ペットをどう扱うのか?
法律上、ペットは「物」としてみなされています。
よって、ペットは預金や不動産などと同様、離婚時には財産分与の対象として取り扱われますが、財産分与の対象として考えるとき、さすがに半分ずつというわけにはいきません。
ペットの場合の財産分与の方法としては、引き取りたい側がペットの時価の分与割合分を相手方に支払って譲り受ける方法が考えられますが、ペットの評価額を算定すること自体が難しい場合がほとんどでしょう。
そのため、よほど珍しい種類でもないかぎり、成長したペットに一般市場で買い手がつくことはないでしょうし、そもそも、家族同様に暮らしてきたペットを売りに出そうとは思わないかもしれません。
ペットの場合、強く引取りを希望した方が引き取るということが一般的です。
しかし、夫婦のどちらも思い入れが強く、引取りを希望する場合には、次のようなポイントをもとに話し合うと良いでしょう。
・どちらに懐いているのか
・どちらが世話をしてきたか
・責任をもって世話ができる状況にあるのか
・離婚後もペットとの面会は可能なのか
まとめ
離婚時の財産分与は、結婚生活で築いた共有財産を公平に分けるための重要な手続きです。
現金や預貯金のみならず、不動産や自動車、家具、電化製品、さらにはペットまでもが分与の対象となり、それぞれ異なる方法で評価や分配が行われます。
不動産や車などは価値を現金に換算して評価し、必要に応じて専門家の査定が求められます。
特に不動産の場合、ローンの支払いが残っている場合には、処理の仕方が複雑になるケースが多いため、専門家に相談することをおすすめします。
また、株式などの有価証券は市場価値が変動するため、分与のタイミングに注意が必要です。
生命保険や学資保険に関しては、返戻金を基に分配を行い、ペットについては希望する方が引き取るケースが一般的です。
財産分与は、夫婦双方が納得できる形を目指すことが理想ですが、自分の要求ばかりを主張するようなことはせず、お互いの立場を思いやって話を進めていくことが肝要です。
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