離婚や別居をするときに、引っ越し費用を請求できる?

離婚や別居を決め、新しい生活を始めようと引っ越しを決めたのに、その費用が大きな負担になってしまうことがあります。

新生活を始めるうえで、費用はなるべく抑えたいと思いますよね。では、引っ越し費用を相手に負担してもらうことは可能でしょうか。

離婚・別居時に引っ越し費用は請求できない

結論からいえば、離婚・別居時に引っ越し費用は請求できません。

理由は、法律上、離婚時の引っ越し費用を認める根拠がないからです。

また、別居した場合、相手に婚姻費用、いわゆる生活費の請求ができますが、引っ越し費用までは含まないといわれています。

婚姻費用は、生活の維持を目的とするもので、引っ越し費用は 婚姻生活を維持するための費用とはみなしにくいからです。

話し合いで合意できれば引っ越し費用を負担してもらえる

このように、離婚や別居時に引っ越し費用を請求できる根拠はありません。

しかし、交渉によって、相手が引っ越し費用を負担することに合意してくれれば、支払ってもらえます。

たとえば、相手の浮気や不倫で離婚や別居をすることになった場合、相手にも負い目があるので、負担してくれる可能性があります。

引越し費用の請求については、根拠がない以上難しいとは思いますが、綿密に交渉内容を練り、粘り強く交渉してみることで、相手の気持ちを動かすことができるかもしれません。

引っ越し費用を請求できない場合はどうするか

では、相手に引っ越し費用を請求できないとすると、どうすれば良いのでしょうか。

実家に戻る ただし一時的なものとして

実家の両親が許してくれるなら、しばらくの間、実家にお世話になるということも選択肢のひとつです。

勝手知ったる実家なので、離婚や別居によって精神的に不安定な状態のときに、両親や家族の支えがあるということは、大きなメリットになるでしょう。

また、しばらくの間、家賃や生活費の負担も大目にみてもらえるかもしれません。

ただし、いつまでも親や家族に負担はかけられないので、この期間を利用して、安定した仕事を探したり、資格取得にトライするなど、独立して生活していける準備をしていくと良いかもしれません。

実家への引っ越しは、あくまで一時的なものとして考えておきましょう。

生活福祉資金貸付制度を利用する

生活福祉資金貸付制度は、所得の少ない世帯、障害者や介護を要する高齢者のいる世帯に対して、その世帯の生活の安定と経済的自立を図ることを目的に無利子または低利子で資金の貸付をする制度です。

生活福祉資金貸付制度の中には、敷金、礼金等の住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用として最大40万円まで貸し付ける住宅入居費という資金があります。

あくまで貸付金であるため、6か月の据置期間経過後は、10年以内に償還しなくてはなりません。

なお、据置期間中は、利息のみの返済が可能です。制度の利用については、一定の条件がありますので、詳しくは各市区町村にご確認ください。

函館市の場合は、以下のページを参照してください。

http://www.hakodatesyakyo.net/consul/consul-fund/

自治体の助成制度を利用する

市区町村によっては、ひとり親家庭や低所得世帯の引っ越し費用や家賃を貸し付けてくれる自治体もあります。

その中で、「母子・父子・寡婦福祉資金貸付制度」という貸付制度があります。

20歳未満の子どもを扶養しているひとり親を対象に、都道府県や中核都市などが用途に応じてさまざまな資金を貸してくれる制度です。

自治体によって名称の違いはありますが、市町村役場や福祉関係部局をはじめ、子どもやひとり親の福祉にかかわる窓口で相談や申請を受け付けていますので、お住いの市区町村役場に確認してみることをおすすめします。

この「母子・父子福祉資金貸付制度」には様々な貸付資金があるのですが、

引越しのために借りられるのは「転宅資金」という資金というもので、最大で26万円まで借りることができます。

函館市の場合は「母子福祉資金等貸付金」制度の中に住宅資金の貸し付けがあります。詳しくは以下のページでご確認ください。

ひとり親家庭の方へ「助成・手当など」 | 函館市

北海道函館市の行政サービスポータルサイト。住民登録、子育て支援、高齢者福祉、保育園入園、医療保険、介護保険など、暮らしに必要な行政サービスをまとめてご案内します。

離婚・別居を一時保留にして、しばらく相手と同居する

引越し費用を捻出できない場合、生活の維持を最優先として、現在の住居にしばらくは相手と同居するということも選択肢のひとつです。

相手と交渉することで、生活費や家賃の負担が免除されるかもしれません。

この場合も、実家に戻ることと同様、一時的なものと考え、将来の自立を目指して、就活や資格取得といった自立への準備をしておきましょう。

別居時の引っ越しでやってはいけないこと

別居時の引っ越しを考えている場合、気をつけなければいけない点が2つあります。

相手の同意なしに出て行ってはいけない

離婚をしていないのに、相手に黙って家を出た場合、夫婦の「同居義務違反」に問われる可能性があります。

民法752条は、「夫婦は同居し互いに協力し扶助しなければならない」と定めています。つまり、夫婦には“同居の義務”が課されているのです。

このため、相手の同意なしに、勝手に別居したり、一緒に暮らすことを拒否することは違反になります。

別居をする際には、必ず相手の同意を取っておきましょう。

勝手に家具や家電を持ち出してはいけない

婚姻期間中に購入した家具や家電などを勝手に持ち出してはいけません。

これらは、離婚時の財産分与の際に、対象となる財産だからです。

ただし、婚姻前から所持していた自己所有のものは「特有財産」と呼ばれ、持ち出しても構いません。

「特有財産」について詳しくは、下記の記事をお読みください。

「特有財産」を含めて財産分与をすると後悔します!

「特有財産」を含めて財産分与をすると後悔します! 婚姻期間中に夫婦で築いた財産を、離婚時に夫婦で分けることを財産分与といいます。 財産分与は婚姻期間中に夫婦が築いた共同で築いた財産を対象としますが、この中に、自己の財産で […]

まとめ

この記事では、離婚や別居をするときに相手に引っ越し費用を負担してもらえるのかについて解説しました。

離婚や別居に伴う引っ越しは、精神的にも経済的にも大きな負担となることが多いものです。

ただ、離婚や別居時に引っ越し費用を相手に請求することは法律に根拠がありません。

しかし、交渉によって相手が費用の負担に応じてくれる可能性もあるため、事前に、綿密な準備をして切り出してみましょう。

引っ越し費用を捻出できない場合は、実家に一時的に戻ることや、生活福祉資金貸付制度、自治体の助成制度を利用することも選択肢として考えおくと良いでしょう。

また、相手に一時的な同居を認めてもらうことで、とりあえず生活に困る事態を回避できるかもしれません。

また別居時には、注意すべき点が2つあり、別居について相手の同意を得ることや、婚姻期間中に形成した財産を勝手に持ち出さないことに注意が必要です。

離婚や別居には引っ越しがつきもので、新居を決めることや引っ越し費用をどうするかについて考えることは大切なことです。

しかし、本当に大事なことは、「その後の生活をどうするのか」「子どもをかかえて生活していけるのか」といったことをしっかり考えたうえで準備にかかることが大切です。

小川たけひろ行政書士事務所では、離婚や別居についての悩みや困りごとについて、相談を承っております。 お気軽にご相談ください。

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