偽装離婚の目的と危険性|バレたらどうなる?法律的リスクも紹介

近年、離婚制度を不正に利用する「偽装離婚」がたびたび社会問題として注目されます。夫婦が正式に離婚を届け出たにもかかわらず、実際には同居し続け、夫婦関係を維持するケースが偽装離婚の典型的なスタイルです。偽装離婚は、その行為だけを見れば問題がないように見えますが、その目的によっては違法行為とみなされ、重大なリスクを伴う場合があります。本記事では、偽装離婚の目的やリスクについて詳しく解説します。

偽装離婚とは

偽装離婚とは、本来の意味での婚姻関係を解消する意思がないにもかかわらず、特定の利益を得るために離婚届を提出する行為を指します。例えば、公的な経済的支援の受給や税制上の優遇措置を目的とする場合が多く、制度を不正に利用する行為と見なされることがあります。

また、偽装離婚は単なる手続き上の問題ではなく、社会全体に影響を及ぼす可能性がある行為です。不正受給が増えれば、本当に支援を必要としている人々が十分な援助を受けられなくなり、社会福祉制度への信頼が損なわれることにつながります。その結果、制度の見直しや支給基準の厳格化が進み、正当に支援を受けるべき人々が不利益を被る恐れもあります。このような背景から、政府や自治体は偽装離婚に対する監視を強化し、発覚した場合には厳正に対処する方針を強めています。

偽装離婚の主な目的

偽装離婚が行われる主な目的として、以下のようなものが挙げられます。

1. 経済的支援を目的とした偽装離婚

生活保護や児童扶養手当、ひとり親家庭向けの各種手当・助成金・割引制度を受けるために偽装離婚をするケースです。こうした制度を受けられるメリットは以下のようなものがあり、そのため偽装離婚する夫婦がいます。

  • 「児童扶養手当の支給や医療費の一部負担が受けられる」
  • 「一時的に家計が潤う」

しかし、このような不正受給は、発覚した場合には詐欺罪として厳しく処罰される可能性があります。自治体によっては、匿名での通報窓口を設け、不正受給の疑いがある世帯の調査を強化している例もあります。

2. 保育園への優先入園を目的とした偽装離婚

シングルマザー・シングルファザーとして申請することで、保育園の入園審査で有利になることを目的に偽装離婚をするケースです。入園審査に関して次のようなことがメリットとして考えられます。

  • 「待機者リストの最上位に来る」
  • 「保育料の減額や免除を受けられる」
  • 「就労証明の要件が緩和されることで、入園のハードルが低くなる」

特に都市部では待機児童問題が深刻であり、シングル家庭が優先的に入園できる制度を利用しようとするケースが増えています。しかし、偽装離婚が発覚すれば、入園の取り消しや退園措置が取られることがあります。さらに、自治体が行う家庭調査によって、離婚後も同居している事実が確認された場合、制度の不正利用と判断される可能性があり、ペナルティが科される場合もあります。

3. 財産保全を目的とした偽装離婚

財産隠しや強制執行を避けるために、離婚に伴う財産分与を活用し、財産を配偶者名義に移すことを目的に偽装離婚をするケースです。

  • 「財産分与の名目で自宅不動産の所有権を夫から妻へ移す」
  • 「離婚後に夫が自己破産する」

このような行為は、詐欺破産罪に問われる可能性があり、破産手続きを行う際の免責が認められないリスクを伴います。破産手続きは厳密に審査されるため、偽装離婚による財産隠しは簡単には通用しません。また、破産管財人による財産調査が行われた場合、偽装離婚を通じた財産移転が発覚すると、免責が許可されず、多額の負債は変わらずといった状況に陥ります。

偽装離婚のリスク

偽装離婚には多くの重大なリスクが伴います。

1. 刑事罰

偽装離婚に関連する主な犯罪には以下のようなものがあります。

  • 公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項): 戸籍に虚偽の内容を記載させた場合、5年以下の懲役または50万円以下の罰金刑。
  • 詐欺罪(刑法246条): 生活保護や児童扶養手当を不正に受給した場合。
  • 詐欺破産罪(破産法265条): 破産手続きにおいて財産を隠す行為。

2. 社会的信用の失墜

偽装離婚が発覚すると、家庭内外での信用を大きく損なうことになります。

  • 会社での評価低下や懲戒処分
  • 近隣住民や親族からの不信感

3. 夫婦や親子の関係が悪化する可能性

偽装離婚は、お互いに納得して行われることが多いものの、時間の経過とともに状況が変化し、夫婦や親子の関係が悪化するリスクを伴います。

  • 予期しない状況の発生: 最初は合意のもとで偽装離婚をしても、後になって片方が不満を抱くことがあります。財産分与や扶養義務の問題、生活スタイルの変化によってトラブルが発生する可能性があります。
  • 法的なトラブルによる対立: 行政の調査や司法の介入を受けた場合、責任の所在を巡って夫婦間に対立が生じることがあります。特に、不正が発覚すると、お互いの主張が食い違い、信頼関係が崩れる原因になります。
  • 社会的信用の失墜: 偽装離婚が周囲に知られることで、家族や職場、親族との関係が悪化することがあります。特に、職場や子供の学校に影響が及ぶと、家庭の信用が大きく損なわれ、その結果夫婦の関係が悪化することがあります。
  • 新しい関係の影響: 偽装離婚のつもりだったものの、どちらかが新しいパートナーを見つけ、実際に関係が変化してしまうケースもあります。これにより、元の関係が修復不可能になることがあります。
  • 子どもへの影響: 親が偽装離婚をしている事実を知ることで、子どもが不信感を抱く場合があります。特に、成長するにつれて、家庭の事情を理解し始めると、心理的な負担を感じることがあります。その結果、親子の関係が悪化してしまうことがあります。

このように、たとえ合意のもとで偽装離婚を行ったとしても、時間の経過とともに様々な問題が発生し、夫婦関係の悪化や子どもとの関係、さらに社会的な信用の失墜を招く可能性があります。

まとめ

偽装離婚は、一見メリットがあるように見えますが、それ以上に重大なリスクやデメリットを伴います。法律上の婚姻関係が解消されることの影響は大きく、不正目的での離婚は刑事罰の対象となり得るだけでなく、社会的信用の喪失にもつながります。

また、一度提出した離婚届は簡単に無効にできるものではなく、安易な偽装離婚は後々取り返しのつかない事態を招く可能性があります。偽装離婚はしないことが一番のリスク回避であることは当然ですが、もし問題を抱えているなら、合法的な偽装離婚でははなく、行政書士や弁護士、行政機関などに相談し、合法的な解決策を探すことが最善の選択です。

小川たけひろ行政書士事務所では、離婚の悩み相談、離婚協議書作成、離婚公正証書の作成サポートを承っております。

電話でのお問い合わせは、土日祝も対応可能(0138)56-0438営業時間9:00~19:00(定休日:土日祝)

お問い合わせ 24時間受付

【関連記事】

離婚時の財産隠しを防ぐ!公平な財産分与を実現するための完全ガイド

離婚時の財産隠しを防ぐ!公平な財産分与を実現するための完全ガイド 離婚時の財産分与では、お互いの財産を正しく把握し、公平に分けることが重要です。しかし、相手が意図的に財産を隠し、正当な取り分を受け取れなくなるケースも少な […]