離婚時の慰謝料、分割払いのリスクと対策を徹底解説
離婚にいたる原因は夫婦によって様々ですが、相手の不倫や浮気など一方が離婚の原因を作った場合、他方が慰謝料を請求することがあります。
離婚原因の内容にもよりますが、慰謝料の額が多額になる場合も多いです。
支払う方に十分な資力があれば、一括で支払ってもらうことが可能でしょうが、そうではない場合や、額が多額になるような場合には、一括での支払いは不可能かもしれません。
では、そうした場合、相手に分割で支払ってもらうことは可能でしょうか。
また、分割払いにする場合、どのようなリスクやデメリットがあるのでしょうか。
また、どのようにすればそれらを回避できるのでしょうか。
- . 離婚時の慰謝料、分割払いのリスクと対策を徹底解説
- 1. 離婚時の慰謝料とは
- 2. 慰謝料は一括払いが原則
- 3. 当事者が合意できれば分割払いも可能
- 4. 慰謝料を分割払いにする場合のリスクとデメリット
- 4.1. 途中で不払いになるリスクがある
- 4.2. 不払いが起きたときの対応に費用を要することがある
- 4.3. 支払いが終わるまで相手と関係が切れない
- 5. 慰謝料の分割払いで後悔しないためにすべきこと
- 5.1. 離婚協議書や合意書など作成する
- 5.2. 「期限の利益喪失」の合意をする
- 5.3. 「強制執行認諾約款」付きの公正証書を作成する
- 5.3.1. 公正証書には明確な支払い方法を記載しておくこと
- 5.4. 連帯保証人をつけてもらう
- 5.5. 調査等の費用を見込んで慰謝料に加算しておく
- 6. まとめ
離婚時の慰謝料とは
離婚する際に「慰謝料」という言葉を聞くことがありますが、どのようなものなのでしょうか。
離婚に際して支払われる慰謝料は、離婚によって相手が被る精神的苦痛に対し、その代償として支払われる金銭のことをいいます。
たとえば、夫婦の一方の不倫や浮気、DVなどが原因で離婚に至った場合、一方が精神的に苦しんだ程度や期間によって慰謝料の額が変わってきます。
慰謝料は一括払いが原則
では、慰謝料はどのように支払われるのでしょうか。
慰謝料は一括払いが原則です。
夫婦の一方に精神上の損害が現実に発生していることから、速やかに支払われることが必要であり、また、不倫や浮気といういわゆる不貞行為でが離婚原因となった場合、感情的にも一刻も早く夫婦関係を解消したいと望むことが多いといったことが理由になっています。
つまり慰謝料を一括払いにする理由として
・精神的苦痛を速やかに手当てできる
・相手との関係を速やかに解消できる
といったことがあげられます。
当事者が合意できれば分割払いも可能
慰謝料は一括払いが原則だとしても、算出された金額が大きかったり、支払う側の資力が十分でないような場合は、夫婦が話し合って合意できれば慰謝料を分割で支払うことも可能です。
慰謝料を分割払いにする場合のリスクとデメリット
では、慰謝料を分割払いにした場合に想定されるリスクやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
途中で不払いになるリスクがある
慰謝料を分割払いにする場合、その金額によっては、長期に渡って支払いを受けることもあります。
そうした場合、相手を取り巻く事情が変わって支払いがされなくなる場合があります。支払い期間が長くなるほどそのリスクは高くなる傾向があります。
不払いが起きたときの対応に費用を要することがある
相手から支払いがなくなった場合、どうするでしょうか。
まず、相手に電話やメールLINEなどで、事情を聴いたり支払いの催促をするでしょう。
こういった場合にに費用といっても若干の通信料が必要となる程度でしょう。
しかし、裁判によって回収しようとしたり、強制執行手続きを行う場合には、相手の住所や勤務先、口座情報などが必要となります。
個人で簡単に調べることができる場合もあれば、調査会社や弁護士などに依頼して調査をするケースも少なくありません。
場合によっては多大な費用がかることがあります。慰謝料を分割払いにした場合、決して少額ではない費用負担の可能性があることを知っておくべきでしょう。
支払いが終わるまで相手と関係が切れない
離婚の原因が相手の不倫や浮気だったとしたら、一刻も早く関係を解消したいという気持ちが強いかもしれません。
でも、分割払いにすると、直接お金の受け渡しをしないでも、支払いが終わるまでは、相手との関係が切れることはありません。
相手が度々支払いに遅れたり、支払いが滞った場合は直接相手と連絡を取らなければならなくなったり、いつまでも関係を解消できなくなってしまいます。
せっかく、心機一転、再出発したいのに相手との関係が足かせになってしまいかねません。
慰謝料の分割払いで後悔しないためにすべきこと
分割払いには上記のようなリスクやデメリットが考えられます。
ではこのようなリスクを回避する方法や、デメリットを軽減する方法はあるのでしょうか。
離婚協議書や合意書など作成する
慰謝料の支払いを分割にすることで合意できたなら、離婚協議書や合意書などを作成しましょう。
離婚を急ぐあまり、合意したことを口約束だけで済ませてしまい、後々、「そんな約束した覚えはない」と言われて、支払ってもらえなくなることがあります。
そんなトラブルを回避するために、取り決めたことをしっかりと文書にして残しておきましょう。
「期限の利益喪失」の合意をする
離婚協議書や合意書に分割払いについて記載したら、「期限の利益喪失」について合意してその旨を文書に記載しておきましょう。
「期限の利益喪失」の合意とは、慰謝料を分割で支払う取り決めをした場合、その支払いが滞れば、その時点で不払い分と残額の全部を請求できるという取り決めです。
この合意をしておかないと、不払い部分しか請求できなくなります。
たとえば、慰謝料の総額が200万円として、それを毎月末日に20万円ずつ支払う約束をしたが、3回目の支払いで不払いになった場合について考えてみます。
この場合、不払いになった時点で、3回目の支払い分である20万円はもちろん、残り7回分の全額である140万円についても支払いを求めることが可能になります。
「強制執行認諾約款」付きの公正証書を作成する
いざ相手からの支払いがなくなった場合、離婚協議や合意書が存在するだけでは、裁判所に対して「相手の口座を差し押さえてくれ」とは言えません。
つまり、離婚協議書などの文書があるだけでは、裁判所に対して強制執行手続きを申し立てることはできません。
強制執行手続きの申立てをするためには、前段階として、裁判を提起して、なおかつ勝訴して「債務名義」とよばれる金銭の回収を強制的におこなうことを許可する文書(判決文など)を取得しなければ、強制執行の手続きはできません。
債務名義を得るためには、裁判手続きを経る必要があり、時間も費用もかかることになります。
しかし、 「不払いがあった場合には強制執行されることについて認諾します」という「強制執行認諾条項」付きの公正証書を作成しておけば、裁判手続きを経ることなく、強制執行することが可能となります。
公正証書には明確な支払い方法を記載しておくこと
強制執行を可能にするには、公正証書に単に「分割で支払う」旨の記載をしただけでは、対象が曖昧なため、強制執行ができません。
そのため、公正証書には次のような内容を記載する必要があります。
・慰謝料の総額
・毎月の支払い額
・支払い期日
・支払い回数
このような内容を明記することで、強制執行の対象範囲が明確になります。
連帯保証人をつけてもらう
分割払いにした場合、支払い期間が長くなると、その間に支払う方の事情が変わることがあります。
たとえば、失業してしまったり、病気や怪我、経済情勢の変化で給料が減ってしまったり、再婚したりと、離婚後に何かしらの変化があるのは仕方のないことです
しかし、その変化が、分割金の支払いに影響を与えてしまう可能性があります。
そうしたときに、相手に対して給与の差し押さえなど強制執行をしても、期待した通りの金額を回収できるとは限りません。
「無い袖は振れない」からです。
このように、慰謝料を支払う方が支払えない状況になったときに、代わりに支払ってくれる連帯保証人を付けるという条項を契約の中に入れることがあります。
万が一の場合に連帯保証人が分割金の支払いをする旨を記載することで、より確実性が増すことになます。
調査等の費用を見込んで慰謝料に加算しておく
いざ相手の口座に強制執行しようとしても、口座が特定できなかったり、住所や勤務先がわからなかったりすると、手続きをするために、調査が必要になる場合があります。
こうした場合、調査会社など専門家に調査を依頼するとかなりの費用を負担する場合があります。
慰謝料を回収するために多大な出費が必要になることは、経済的にも精神的にも大きな負担になります。
そのため、こうした可能性が予想される場合には、慰謝料の分割払いについて話し合いをするときに、こうした費用を織り込んだ高めの慰謝料額を設定しておくのもひとつの対策でしょう。
ただし、確実に不払いが起こるとは限らないため、相手の理解が得られない可能性が高いかもしれません。
まとめ
慰謝料を分割払いにする場合、一括払いに比べて不払いのリスクが高まるだけでなく、支払いが完了するまで相手との関係が続くため、早期に関係を切りたい場合には不安が残ることがあります。
こうしたリスクやデメリットを回避するためには、まずは、慰謝料の支払いについて合意した旨を離婚協議書や合意書にしておきましょう。
さらに、「強制執行認諾約款」付きの公正証書を作成しておくことで、裁判を経ずに強制執行が可能となり、不払いが発生した場合でも回収が可能となります。
ただし、公正証書を作成しても、相手の資力が十分でない場合には、期待通りの結果にならない可能性があります。
そのため、不払いに備えて連帯保証人を付けてもらうことでリスクを回避するということも選択肢のひとつでしょう。
慰謝料の分割払いを選択する場合には、相手の資力や相手を取り巻く状況の変化、相手が約束を守れる人なのか、などを慎重に見極める必要があります。
小川たけひろ行政書士事務所では、離婚協議書や合意書など各種契約書の作成、公正証書の作成サポートなどを承っております。
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