離婚後も旧姓に戻さない?婚氏続称のメリット・デメリット

離婚後も旧姓に戻さない?婚氏続称のメリット・デメリット

離婚を考えるとき、多くの方が直面するのが「名字をどうするか」という問題です。

日本では、結婚時に夫または妻の姓にします。そのため、離婚する場合には、旧姓に戻すか、結婚時の姓を使い続ける「婚氏続称」(こんしぞくしょう)の選択を迫られることになります。

婚氏続称を選択した場合、さまざまな利便性をもたらす一方で、心理的な影響や手続き上の課題も伴う場合があります。

本記事では、婚氏続称のメリットやデメリット、手続きの具体的な流れを詳しく解説していきます。

離婚後の名字をどうするかは、離婚後の人生設計において非常に重要な決断です。

そのため、制度を正しく理解し、自分の状況合った選択をすることが大切です。

この記事では、婚氏続称の意味やメリット・デメリットを解説します。


1. 離婚後の名字、どうする?「婚氏続称」とは

「婚氏続称(こんしぞくしょう)」とは、離婚後も結婚時に使用していた姓をそのまま使い続けることをいいます。

日本の民法では、離婚をした際に原則として旧姓(婚姻前の名字)に戻ることが規定されています。

第767条【離婚による復氏等】

① 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

② 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

手続は簡単で、離婚届と同時に、または離婚届を提出してから3か月以内に、役所に婚氏続称届を提出するだけで済み、難しい手続きは必要ありません。


2. 婚氏続称を選ぶメリットとは?

婚氏続称を選ぶことで、いくつかのメリットが得られます。特に以下の点が挙げられます。

2.1 子どもの生活への影響を最小限に抑えることができる

離婚後も結婚時の姓を使い続けることで、子どもと同じ名字を名乗ることできます。

これにより、学校や地域のコミュニティなどで不要な混乱を避けることができます。

特に子どもにとって、親と名字が違う状況は、周囲の目を気にしたり、友達から詮索されたり、それがプレッシャーになるこもあります。

また、名字が変わってしまうことで、離婚に伴う手続きが必要になり、手続きのたびに、親と自分の姓の違いを意識させられ、「自分の家庭に何か問題があるのだろか」と感じてしまうかもしれません。

このような理由から、名字を変えないという選択は、子どもの心の負担を軽減する効果が期待できます。

さらに、地域のコミュニティにおいても、名字が一致していることで「家族」としての認識されるため、周囲から余計な詮索や誤解を受けることなく過ごすことができます。

2.2 仕事での影響を抑えることができる

離婚後に名字を変えると、仕事上、混乱や煩雑な手続きが発生することがあります。

例えば、名刺を新しく作り直したり、メールアドレスや社内システムの登録名の変更、取引先への周知などが必要になる場合があります。

こうした変更によって、特に顧客や取引先との信頼関係を築いている職種では、本人だけでなく、会社の上司や同僚、そして取引先にとっても大きな負担となることがあります。

婚氏続称を選択することで、こうした問題を回避し、スムーズに業務を継続することが可能です。

2.3 銀行口座や証明書類などの変更手続きの手間を減らせる

離婚後旧姓に戻ると、銀行口座やクレジットカード、運転免許証、保険証、そして各種契約書類など、多岐にわたる書類で名前変更の手続きが必要となります。

このような手続きには時間と手間がかかるだけでなく、手続きの種類によっては、手数料が発生することもあります。

また、金融機関での名義変更手続きや保険会社との契約内容の変更などは、手続きに必要な書類が多岐にわたり、窓口や場合によっては郵送での対応が必要になる場合もあるため、予想以上に時間と手間がかかることがあります。

婚氏続称を選択することで、これら煩雑な手続きを大幅に回避することができます。


3. 婚氏続称のデメリットと注意点

一方で、婚氏続称にはデメリットや注意すべき点も存在します。

3.1 前婚を意識させられる

結婚時の姓を使い続けることで、元配偶者との心理的なつながりを断ち切れないと感じる人もいます。

特に、日常生活や社会的な場面で頻繁にその姓を使用するたびに、過去の結婚生活や離婚の経験を思い出してしまい、心理的な負担が増す場合があります。

また、「離婚したのに、まだ元配偶者の名字を使っている」といった状況に対して、自分自身が矛盾を感じたり、周囲の人々から詮索を受けたり、不要な関心を持たれることも少なくありません。

このような状況が長期間続くと、心の整理がつきにくくなり、離婚後の新しい生活に支障をきたすこともあります。

このような心理的な負担を軽減するためには、自分自身が納得できる理由を持って姓を選び、周囲からの干渉に対処するための準備と心構えを持つことが大切です。

3.2 再婚時には子どにも大きな負担がかることも

婚氏続称を選んだ場合、再婚時に名字を変更する手続きが煩雑になる場合があります。

例えば、離婚後再婚し、現在の元配偶者の姓から旧姓を名乗ることを選択する場合には、家庭裁判所の許可が必要になります。

この手続きには時間がかかることがあり、また必ずしも許可されるとは限らないケースもあるため、許可されるまでは、落ち着かない状態になるかもしれません。

また、再婚後の子どもの名字に関しても、親と子の名字が一致しないといった事態が発生することもあります。

たとえば、母親が再婚相手の戸籍に入っても、子どもは、自動的に再婚相手の戸籍に入るわけではありません。

子どもが再婚相手の戸籍に入り、再婚相手の姓を名乗るためには、手続きが必要になります。

さらに子どもにとっては、手続きだけではなく、親族や友人から名字変更について尋ねられることが増え、そのたびに、家庭のプライベートなことを繰り返し説明しなければならないといったといった状況におかれ、大きなストレスになることがあります。

再婚時の名字の選択には、複数の解決しなければならない課題を含むため、事前によく検討しておくことが大切です。

3.3 元の配偶者が嫌がることがある

元配偶者にとって、離婚後も引き続き自分の姓を使用されることで、前婚を引きずっているような感覚になり、新しい生活に落ち着いて臨めないという気持ちになることがあります。

また、離婚後に元配偶者が再婚を考えている場合に、婚氏続称されることで、新しいパートナーとの関係に少なからず影響を与えるケースがあります。

たとえば、再婚して新しいパートナーが同じ姓を名乗ることで、新しい家族や友人が混乱してしまうといったことがあり得ます。

そのため、元配偶者が婚氏続称に反対することがあります。

4. まとめ

婚氏続称は、離婚後の人生設計を考える上で非常に重要な選択肢の一つです。

そのメリットとデメリットをしっかりと理解し、自分自身の価値観や生活スタイル、将来のライフプランに合った決断をすることが不可欠です。

また、子どもがいる夫婦の場合、婚氏続称を選択することで、子どもに与える影響を十分に考慮して決めることが大切です。

離婚は人生において大きな転換点となる出来事です。

離婚手続きの過程で必要な知識を持つことは、スムーズに新しいスタートを切るためには大きな武器になります。

繰り返しますが、婚氏続称を選択するかにあたっては、子どもへの影響を最優先に考え、社会的な状況、仕事への影響など、多くの要素を十分に考慮して決めましょう。

また、名字の選択に限らず、離婚について問題に直面した際には、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

当事務所では、婚氏続称、離婚全般についての悩み、離婚協議書や公正証書作成のサポートを承っております。

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