【離婚協議書VS公正証書】養育費の不払いに“効く”のはどっち?

離婚時に養育費の取り決めをしたはずなのに、数年後「元夫が払ってくれない」という相談は少なくありません。

実は、どんな書類を残しているかによって、養育費の回収がスムーズに進むかどうかは大きく異なります。

この記事では、離婚協議書と公正証書の違いを中心に、養育費を確実に受け取るための現実的な備えについて、行政書士の視点から解説していきます。

離婚協議書では養育費の差し押さえができない理由

離婚協議書とは、夫婦が離婚に合意した内容(財産分与や養育費、慰謝料など)をまとめた文書で、当事者同士で自由に作成できる書類です。作成にあたっては公的な審査が不要で、比較的簡単に準備できるという利点があります。

そのため、費用をかけずに離婚後の約束事を文書に残したい方にとっては、身近な手段と言えるでしょう。

しかし、この離婚協議書は、あくまで私文書に過ぎず、法的には「契約書」としての位置づけにとどまります。そのため、万が一、相手が取り決めた養育費を支払わなくなった場合、そのままでは強制的に相手の財産を差し押さえることはできません。

強制執行を行うには、以下のような追加手続きが必要になります。

養育費が不払いとなる → 家庭裁判所に調停や訴訟を申し立てる → 裁判所の判決(もしくは調停調書・和解調書)を得る → 強制執行が可能になる

つまり、協議書の存在だけでは“即座に”差し押さえをすることはできず、裁判所の判断を経なければならないのです。こうしたプロセスには数ヶ月以上かかる場合もあり、その間に生活費に困窮するケースも少なくありません。

これらの手続きを知らないまま協議書を作成し、「書面があるから安心」と思い込んでしまうことで、いざというときに困ってしまう方が非常に多いのが実情です。

養育費の不払いに備えるなら公正証書が有効

離婚公正証書とは、公証人という法律の専門家が、夫婦間で取り決めた離婚条件(養育費、財産分与、慰謝料など)をもとに作成する、法的効力の高い公文書です。これにより、私的に作成された離婚協議書よりも強い証明力と実行力を持つ文書として取り扱われます。

この公正証書の最大の特徴は、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこう にんだくもんごん)」と呼ばれる文言を盛り込める点です。この文言が含まれていることで、相手が支払いを怠った場合でも、わざわざ裁判を起こす必要がなく、すぐに給与や財産の差し押さえといった強制執行の手続きを進めることが可能になります。

つまり、公正証書を作成しておけば、万が一支払いが滞っても、時間や費用をかけずに法的な対応を取ることができるのです。特に子どもの養育費のように、毎月継続して支払われるべきものについては、その安定性と確実性を確保するうえで、公正証書の存在が非常に大きな意味を持つのです。

公正証書作成の流れ

以下は、公正証書を作成する際のおおまかな手順です。

  1. 合意内容の整理 まず、夫婦間で取り決めた内容(養育費の金額・支払い期間・支払日・振込先口座など)を明確にします。行政書士に相談することで、法的に有効な表現で整理され、抜けや漏れのない内容にまとめられます。
  2. 公証役場への事前相談と予約 公証役場に連絡し、公正証書の作成について事前相談と予約を行います。多くの場合、必要書類の提出や内容確認のために、事前の文案送付が求められます。
  3. 必要書類の準備 ・本人確認書類(運転免許証など) ・戸籍謄本や住民票など、当事者の状況を証明する書類 ・合意した内容をまとめたメモや原案 ・認印(署名捺印が必要な場合)
  4. 公証役場での面談・作成 公証人が内容を確認し、公正証書として正式に作成します。通常、当事者双方が公証役場に出向き、その場で署名・押印を行います。しかし、「相手と一緒に公証役場へ行きたくない」「相手と顔を合わせたくない」など、希望があれば、行政書士が代理作成することも可能です。
  5. 完成・交付 公正証書が完成すると、正本・謄本が交付されます。正本は将来的に強制執行が必要になった際に使用される重要な書類ですので、大切に保管しましょう。

なぜ公正証書の重要性が知られていないのか

多くの方が「書面さえ交わしておけば安心」と考えがちですが、実際には離婚協議書と離婚公正証書では法的な効力に大きな違いがあります。そのため、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまうケースも少なくありません。

特に、強制執行の可否という重要な点においては、この二つの書類の間に大きな隔たりがあります。しかし一般的には、こうした違いが十分に理解されていないのが現状です。

また、公正証書を作成するには公証役場とのやり取りや書類の準備、さらに一定の費用が発生するため、心理的・経済的ハードルを感じて敬遠されがちです。しかし、それでも公正証書を選んでおくことで得られる“将来の安心感”は、短期的な手間や出費を大きく上回る価値があります。

行政書士のサポート内容

養育費や慰謝料の支払いを確実なものにするためには、離婚前に公正証書を作成することを強く推奨します。

離婚後の作成には、相手が協力をしてくれないといったリスクがあるためです。

行政書士は、 合意内容の整理 ・公証役場への文案提出 ・作成に必要な書類準備 などをサポートできます。

また、元配偶者との直接的なやり取りに対して心理的な負担を感じている方に対しては、行政書士が第三者として間に入り、円滑なコミュニケーションをサポートすることも可能です。

たとえば、相手と直接連絡を取ることに抵抗がある場合には、行政書士が文案の作成や連絡調整を代行することで、感情的な衝突やストレスを回避できます。また、公証役場での手続きにも同行または代理作成するなど、依頼者様の不安を最小限に抑える体制を整えることができます。

「相手と話すのが怖い」「冷静に話し合える自信がない」という方にとって、専門家の介入は精神的な安心にもつながる重要なサポートになります。

まとめ

離婚協議書は、夫婦間で取り決めた内容を記録に残すという意味では「約束の証」になりますが、それだけでは相手が支払いを怠った際にすぐに対応できる法的な力はありません。特に養育費のように、長期にわたって定期的な支払いが必要なものについては、協議書だけに頼るのは非常にリスクが高いのが実情です。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、「強制執行ができる書面=公正証書」を事前に準備しておくことが、最も現実的かつ安心できる対策です。不払いが発生したときに、すぐに手続きに移れるかどうかで、精神的負担や生活への影響は大きく変わってきます。

将来の安心を得るためにも、離婚協議の段階から専門家に相談し、必要なサポートを受けながら万全の準備を整えておくことが大切です。離婚後の自分と子どもの生活を守るための一歩として、公正証書の作成を前向きに検討してみてください。

もし、公正証書の作成や養育費に関するサポートについてご不明点やご不安があれば、お気軽にご相談ください。

小川たけひろ行政書士事務所では、離婚に伴う書類作成はもちろん、公正証書作成の手続き、公証役場とのやりとり、そして相手との連絡調整まで、依頼者様の状況に沿ったサポートをご提供いたします。

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