離婚協議書が必要なケースと不要なケース:作成のポイントと注意点は?
離婚協議書は、離婚の際に夫婦が話し合いによって決めた取り決めを記録する書面です。
これには、子どもの養育費や財産分与、親権や慰謝料などが含まれます。
離婚協議書を作成することで、口約束ではなく”証拠”として残すことができ、将来のトラブルを防ぐ役割を果たします。
また、作成した離婚協議書を公正証書にすることでより強力な効果を持たせることが可能です。
逆に、離婚協議書がない場合、離婚後に取り決めに関して意見が食い違い、トラブルに発展するリスクがあります。
そのため、離婚協議書の有無は、離婚後の生活において大きな違いを生むことになります。
本記事では、離婚協議書が必要なケースと不要なケースについて具体的に解説し、作成のポイントや注意点についても詳しく説明します。
離婚協議書が必要なケース
離婚協議書を作成することで、離婚後に生じる可能性のあるトラブルを未然に防ぐことができます。
以下は、離婚協議書が必要とされる具体的なケースです。
養育費の取り決めがある場合
離婚する際に、子どもの養育費について取り決める場合は、必ず離婚協議書を作成することをお勧めします。
養育費の支払いは長期にわたることが多く、取り決め内容を明確にしておかないと、支払いが滞ったり、金額について争いが生じることがあります。
例えば、離婚後に養育費の支払いが滞ったため、生活費に困り、再度相手方に交渉を強いられるケースが多々見られます。
相手が話し合いに応じてくれる場合はなんとか対処のしようがありますが、そうでないことも多いのが現状です。
こうしたトラブルを防ぐためには、離婚協議書を作成し、できれば「強制執行認諾文」言の入った公正証書にすることが非常に有効です。
こうしておくこと、万が一支払いが滞った場合には、裁判を経ずに強制執行が可能となり、養育費を確保することができます。
また、養育費の支払い期間や金額についても具体的に記載し、双方の合意を文書に残すことで、後々の誤解や争いを防ぐことができます。
具体的な内容がしっかり記載された離婚協議書を作成することで、離婚後の子どもの生活を守り、安定した環境を提供することができます。
財産分与が複雑な場合
共有財産が多かったり、財産分与が複雑な場合にも、離婚協議書を作成することが重要です。
不動産やローンが絡む場合、明確な取り決めを文書にしておかないと、離婚後にトラブルになる可能性が多いです。
特に、オーバーローン状態の不動産を持つ場合、その処理方法によっては、夫婦だけで決められないことも多く、金融機関などの承諾なしに行動して、後に一括返済を求められるケースもあります。
このように、財産分与は複雑でわかりにくことが多く、曖昧なまま進めていくと離婚後に想定外の負担を抱えることになりかねません。
そのため、取り決めに当たり、しっかりとした知識を蓄え、場合によっては、弁護士や行政書士など専門家に相談しながら話し合いを進めていくと良いかもしれません。
そして取り決めたことは、しっかり離婚協議書に記載することで、トラブルを防ぐことができます。
親権や面会交流を決める場合
子どもに関する取り決め、特に親権や面会交流についても、離婚協議書に明記しておきましょう。
親権が夫婦どちらに帰属するのか、面会交流の頻度や方法について明確に取り決めておくことで、子どもにとって最適な環境を維持することができます。
曖昧な取り決めは、親同士のトラブルを引き起こし、子どもに悪影響を及ぼす可能性がります。
何より子どもの幸せを最優先に考えて、しっかりと文書に残しておきましょう。
離婚後の生活費に不安がある場合
離婚後の生活費について不安がある場合、例えば配偶者が扶養的なサポートを続ける必要がある場合には、その旨を話し合い、離婚協議書に記載することを忘れてはいけません。
特に専業主婦や収入の少ない配偶者が離婚後しばらくの間は生活に困らない暮らしを送るために、生活費の取り決めをしっかり話し合う要があります。
そして、取り決めを離婚協議書に記載することで、離婚後の経済的な不安を軽減できます。
離婚協議書が不要なケース
離婚協議書が必ずしも必要ではない場合もあります。以下は、離婚協議書が不要と考えられるケースです。
財産や子どもの取り決めがない場合
財産の分与や子どもの養育費などの取り決めが全くない場合、離婚協議書を作成する必要は基本的にありません。
しかし、このような場合でも、双方がしっかりと合意していることを確認するため、口頭での合意だけではなく、簡単な文書などを残しておくことが大切です。
離婚後しばらくしてから、慰謝料を請求されたり、財産分与の請求をされては、せっかく軌道に乗り始めた生活が乱されることになりかねません。
双方が口約束で合意しても問題が起きる可能性が低い場合
夫婦双方が信頼関係を保ち、今後の生活に関する取り決めについて口約束で合意し、問題が発生する可能性が極めて低い場合も、離婚協議書は必ずしも必要ではありません。
しかし、将来的なトラブルのリスクを考えると、最低限の取り決めは文書化しておく方が安心です。
離婚協議書作成のポイント
離婚協議書を作成する際には、以下のポイントに注意することが重要です。
離婚協議に記載すべき基本項目
離婚協議書には、最低限以下の項目を記載することが推奨されます。
- 養育費の取り決め:金額、支払い方法、支払い期間
- 財産分与の内容:具体的な財産の分け方、不動産や預貯金の扱い
- 親権や面会交流の取り決め:親権者の指定、面会の頻度や条件
- 慰謝料の有無:慰謝料を支払う場合の金額と支払い方法
- 清算条項:この条文を記載することで、離婚後、新たに慰謝料や財産分与などの請求ができなくなります。
これらの項目を明確に記載することで、後々のトラブルを防止できます。
曖昧な表現を避ける必要性
離婚協議書を作成する際には、曖昧な表現を避けることが重要です。
例えば、「まとまったお金が入ったら養育費を払う」とか「できるだけ面会する」といった表現は、具体性に欠け、後々の争いの原因となる可能性があります。
特に養育費についての支払いを、公正証書化するためには、開始時期と終期、支払い方法、毎月の金額が明示されていることが必要になります。
たとえば、「甲は、乙に対し、子が20歳になる月まで、毎月金○○円を令和〇年〇月〇日限り、振込の方法により支払う」とか 「毎月第2土曜日に面会する」など、具体的な内容を記載することで、双方が同じ理解を持つことができます。
公正証書化のメリットと注意点
離婚協議書を公正証書にすることで、法的効力を持たせることができます。
公正証書化された協議書は、特に「強制執行認諾文言」が記載されていた場合、相手が取り決めを守らないときには、裁判を経ずに相手の財産に強制執行を行い、そこから強制的に回収することが可能です。
そのため、特に養育費や慰謝料を分割で支払ってもらう場合には、「強制執行認諾文言」付きの公正証書にすることをお勧めします。ただし、公正証書を作成するためには、公証役場で手続きをして作成する必要があり、公証人に記載内容を伝えたり、費用がかかる点に注意が必要です。
自作 vs 専門家に依頼する場合の違い
離婚協議書は自分で作成することも可能ですが、法律的な知識がない場合、内容に不備が生じて、効力が生じないことが少なくありません。
そのため、専門家(行政書士や弁護士)に依頼することで、法的に有効な文書を作成し、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、専門家の助言を受けることで、取り決めに抜けや漏れがないか確認できるというメリットもあります。
まとめ
離婚協議書を作成することは、離婚後の生活を安心して送るための重要なステップです。
離婚協議書があることで、双方が合意した内容が明確になり、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
特に養育費や財産分与、親権などの重要な取り決めについては、協議書を作成して公正証書にすることで、強制力を持たせることができます。
離婚は新たな人生のスタートです。
そのスタートを安心して切るために、離婚協議書をしっかりと作成し、できれば、強制力と証明力のある公正証書にしておくことをお勧めします。
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