離婚協議書を作らないと危険?作らないと起こるリスクを解説

離婚を決意した際、多くの人が感情的になりがちですが、冷静に将来を見据えた手続きを進めることが重要です。特に「離婚協議書」を作らないまま離婚すると、後々トラブルに発展する可能性が高くなります。本記事では、離婚協議書を作成しなかったことで生じるリスクと、その対策について詳しく解説します。
離婚協議書とは?
離婚協議書とは、夫婦が合意した離婚条件を記載した書面のことです。主に以下のような内容を盛り込みます。
- 財産分与(貯金・不動産・保険などの分け方)
- 養育費の支払い(金額・支払い方法・支払い期間)
- 親権・面会交流の取り決め
- 慰謝料の有無とその支払い方法
- 年金分割の取り決め
- 離婚後の約束事(例:連絡手段・住所変更時の通知など)
離婚協議書があることで、後々の争いやトラブルを回避し、スムーズに新しい生活をスタートできます。
離婚協議書を作らないことで起こるリスク
離婚時に口約束だけで合意し、正式な協議書を作らないと、次のような問題が発生する可能性があります。
養育費が支払われなくなる可能性
離婚時に「子どものために毎月養育費を支払う」と約束しても、書面に残していなければ、後になって相手が支払いを拒否する可能性があります。特に、相手の経済状況が変化したり、新たな家庭を持ったりすると、支払いが滞るケースが増えます。
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財産分与を巡る争いが起こる可能性
離婚後に「この財産は自分のものだった」「分けると約束したのに」といった財産分与に関する争いが起こることは珍しくありません。特に、婚姻期間中に築いた財産の所有について明確な記録が残されていない場合、裁判になっても証拠が不足し、正当な権利を主張するのが難しくなる可能性があります。
また、口約束だけで合意した場合、相手が後から合意内容を否定することもあり、話し合いがこじれる要因となります。財産分与をスムーズに進めるためには、財産の所有状況を詳細に記録しておき、離婚協議書に記載しておくことが重要です。
面会交流がうまくいかなくなる可能性
子どもと離れて暮らす親が面会を望んでも、元配偶者が急に拒否することがあります。特に、面会交流の具体的なルールを決めずに離婚した場合、「会えると言われていたのに、急に面会を拒まれた」といったトラブルが発生しやすくなります。こうした状況では、別居親だけが混乱するだけでなく、子どもにとっても混乱やストレスが生じる原因になってしまうかもしれません。
面会交流が円滑に行われるためには、事前に詳細な取り決めをしておくことが不可欠です。例えば、面会の頻度、日時、場所、送迎の方法、連絡手段などを明確に決めておくことで、不要な衝突を避けられます。また、子どもの成長に応じてルールを見直す仕組みを作っておくことも重要です。
さらに、面会交流を拒否される場合の対応策も考えておく必要があります。例えば、面会交流支援センターを利用したり、第三者を介して話し合いを行うことで、スムーズな面会交流の実現を目指すことができます。こうした準備を整えておくことで、子どもの心理的負担を減らし、親子関係の維持を図ることができます。
面会交流支援センター 面会ネット
面会ネットは日程調整支援はもちろん、事前面談不要で付添い支援、引渡し支援などの面会交流支援を行っています。対象地区は全国の面会交流
慰謝料の未払い・支払い拒否の可能性
不貞行為やDVが原因で慰謝料を請求する場合でも、離婚協議書を作成していないと、相手が支払いを拒否したり、途中で支払いを止めてしまう可能性があります。特に、慰謝料が高額になり、分割払いとなるケースでは、書面がないと、相手が支払ってくれなくなることも考えられます。そのため、慰謝料の取り決めは口約束ではなく、離婚協議書に条件を記載しておくことが重要です。
さらに、慰謝料の額が高額になるケースや支払いが長期間渡るような場合には、離婚協議書を公正証書にすることで、相手が支払いを怠った場合に裁判手続きをすることなく、強制的に相手の財産や給与を差し押さえることができ、確実な回収につながります。また、支払い期限や遅延が発生した場合の対応策も記載することで、より確実性の高いものとなるでしょう。
離婚後の年金分割ができなくなる可能性
離婚後に年金分割の手続きを怠ると、受給額に大きな影響を与える可能性があります。特に、婚姻期間中に配偶者が厚生年金や共済年金に加入していた場合、適切に手続きを行わなければ、受け取りの権利を失うことがあります。
年金分割の申請には離婚後2年以内の期限が設けられており、相手の同意が必要になる分割があります。そのため、離婚協議書に記載し、公正証書として残しておくことで、トラブルを防ぎ、円滑な手続きが可能になります。
離婚協議書の作成手順
夫婦で話し合い、内容を決める
まず、財産分与や養育費、慰謝料といった重要な条件について、夫婦双方が落ち着いて話し合うことが不可欠です。離婚に至る経緯に感情的な問題が絡むことが多いため、冷静に将来の生活を考慮しながら合意形成を進めることが重要です。
特に、財産分与では双方の貢献度を正しく評価し、公平な分配を目指すことが求められます。養育費に関しては、子どもの健全な成長を第一に考え、継続的な支払いが可能な金額を現実的に設定することが大切です。
また、面会交流の取り決めも非常に重要です。子どもの心理的な安定を保つためには、非監護親との定期的な交流が必要となる場合が多く、面会の頻度や方法を明確にすることが求められます。例えば、月に何回面会するのか、どこで会うのか、送迎の負担をどのように分けるのか、特別な行事(誕生日や学校行事)への参加をどうするのかといった点を具体的に決めておくことが望ましいです。
慰謝料についても、法的な根拠や支払い方法を明確にし、合意が後々覆ることのないようにしておく必要があります。これらの条件をしっかりと決めることで、離婚後のトラブルを防ぎ、双方が安心して新たな生活をスタートできるようになります。事前に自分の希望と話し合いのポイント整理して、ノートなどにまとめておくと話し合いがスムーズに進みます。
協議書の草案を作成する
話し合った内容を文書にまとめます。この際、できるだけ具体的に書くことが重要です。例えば、「養育費は月3万円」と記載するのではなく、「毎月25日までに子どもの口座に3万円を振り込む」と詳細に明記することで、後々の誤解やトラブルを防ぐことができます。
また、面会交流についても、単に「月に2回会う」とするのではなく、「毎月第2・第4土曜日の10時から15時まで、公園やファミリーレストランなどの公共の場所で面会する」と具体的な条件を決めておくと、実施の際にスムーズになります。
さらに、財産分与や慰謝料に関しても、支払い方法や期限を詳細に記載することが重要です。「財産分与として100万円を支払う」とするよりも、「財産分与として100万円を3回に分け、毎月末日までに銀行振込で支払う」と具体的に書くことで、トラブルの発生を防ぎ、双方の合意内容を明確にすることができます。
このように、離婚協議書にはできるだけ詳細な情報を記載し、後々の不明点を減らす工夫が必要です。
行政書士や弁護士に相談する
離婚協議書を有効で確実なものにするためには、行政書士や弁護士に相談し、内容を十分に検討してもらうことをおすすめします。特に、財産分与や慰謝料の取り決めに関しては、複雑で専門家のアドバイス無しに取り決めすることは非常に危険です。専門家に相談することで、法的に有効で実行可能な条件を整え、トラブルの発生をリスクを軽減できます。
例えば、財産分与では財産の種別や分割方法、支払いスケジュールを明確にし、慰謝料については具体的な金額や支払い方法を細かく取り決めておくことが大切です。また、面会交流に関するルールも、曖昧な記載ではなく、具体的な日時や場所、頻度、送迎の方法まで記載することで、後の争いを防ぐことができます。こうしたことは夫婦間だけで取り決めすると、漏れや不必要な取り決めをしてしまうことがあります。そのため、専門家を活用することで、離婚協議書の内容をより明確で実行しやすいものにすることが可能になります。
公正証書にする
養育費や慰謝料など金銭の支払いの約束をした場合、口約束だけでは、その後支払いが滞ってしまうことがあります。そのため離婚協議書などに記載しておくことが重要ですが、離婚協議書に記載することだけでは不十分です。
養育費は毎月払いが原則で、子どもが成人するまで支払いが続きます。また、慰謝料が高額であったり、長期間に渡る分割払いだった場合には、後に、相手側が再婚したり、経済的な事情が変わるなどして不払いになる怖れがあります。
このようなリスクを回避するために、離婚協議書を公正証書にしておくと、万一不払いが発生した場合には、裁判手続きをすることなく、相手の給与や財産に強制執行が可能になります。
まとめ
離婚協議書は、離婚後のトラブルを防ぐために極めて重要な書類です。口約束だけでは、後々「そんな約束はしていない」「状況が変わった」と言われてしまうリスクがあります。
離婚を決めたら、感情に流されず、冷静に話し合って協議書を作成することが重要です。特に、財産分与や養育費については、一旦こじれると長期化することが多く、話し合いがまとまらず、調停や裁判になればさらに時間と費用がかかる可能性があります。
こういったことにならないためにも、離婚時にしっかりと話し合い、確実に合意できたことを離婚協議書に記載しましょう。
また、養育費や慰謝料などの支払いが長期間に渡るものは、不払いの危険があるため、強制力や証明力が強力な公正証書として残しておくことをおすすめします。
さらに、行政書士など専門家を活用することで、内容に過不足のないものを作成することが可能になります。
小川たけひろ行政書士事務所では、離婚協議書の作成、公正証書の作成サポート、離婚に関する相談を承っております。
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