フリーランスが契約を途中で解除したいときはどうする?契約解除・中途解約のルールを行政書士が解説

フリーランスが契約を途中で解除したい場合の契約解除・中途解約のルールを解説するイメージ

フリーランスやクリエイターとして仕事をしていると、契約を結んだ後に「この仕事を続けるのは難しい」と感じることがあります。

たとえば、クライアントから必要な資料が送られてこない、何度連絡しても返事がない、当初の契約にはなかった作業を次々と要求される、報酬が支払われないなどのケースです。

反対に、クライアント側から突然「プロジェクトを中止するので契約を終了したい」と言われることもあります。

このような場合、契約は自由に終了できるのでしょうか。

「仕事を続けたくないから契約をやめます」と一方的に伝えるだけで問題はないのでしょうか。

実際には、契約を途中で終了できるかどうかは、契約内容や終了を求める理由によって異なります。

また、契約を終了できたとしても、それまでに行った仕事の報酬、制作途中の成果物、著作権、損害賠償など、さまざまな問題が残る可能性があります。

この記事では、フリーランス・クリエイターが知っておきたい契約解除や中途解約の基本的な考え方と、契約書を作成するときのポイントについて、行政書士が分かりやすく解説します。

目次

フリーランスの契約は途中で終了できる?

フリーランス・クリエイターの仕事では、業務委託契約が利用されることが多くあります。

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しかし、「業務委託契約」という名称の契約が民法に定められているわけではありません。

実際には、仕事の内容によって「請負契約」や「委任契約」「準委任契約」などの性質を持つことがあります。

たとえば、イラスト、デザイン、動画などの成果物を完成させることを目的とする契約は、請負契約に近い性質を持つことがあります。

一方、コンサルティング、SNS運用、継続的な業務サポートなどは、準委任契約に近い性質を持つことがあります。

この違いは、契約を途中で終了できるかどうかを考えるうえでも重要です。

契約書に「業務委託契約」と書かれていても、すべて同じルールが適用されるとは限りません。

契約書の名称だけではなく、「どのような仕事を依頼されたのか」「何を完成させる契約なのか」「どのような業務を行う契約なのか」といった実際の契約内容を確認する必要があります。

「契約解除」と「中途解約」は何が違う?

契約を途中で終了する場面では、「解除」と「解約」という言葉が使われます。

日常生活ではほとんど同じ意味で使われることもありますが、契約実務では少し意味が異なることがあります。

契約解除とは、相手が契約上の義務を果たさないなど、一定の理由によって契約関係を終了させることをいいます。

たとえば、クライアントが約束した報酬を支払わない場合や、フリーランスが納期を大幅に過ぎても成果物を納品しない場合などです。

一方、中途解約とは、契約期間の途中で契約関係を終了させることをいいます。

必ずしも相手に契約違反があるとは限りません。

実際の契約書では「解除」「解約」「契約終了」など、さまざまな言葉が使われています。

大切なのは言葉の違いだけではありません。

「どのような場合に契約を終了できるのか」「終了するときにどのような手続きが必要なのか」を契約書で明確にしておくことが重要です。

どのような場合に契約を解除できる?

フリーランス・クリエイターの仕事では、さまざまな理由から契約の継続が難しくなることがあります。

代表的なケースを見てみましょう。

報酬が支払われない

仕事をしたにもかかわらず、契約で定めた期限までに報酬が支払われない場合があります。

報酬の未払いは、フリーランスにとって大きな問題です。

しかし、支払期限を1日過ぎただけで、必ず直ちに契約を解除できるとは限りません。

一般的には、相手に支払いを求め、それでも支払いが行われない場合に解除を検討することになります。

契約書には、報酬の支払時期だけではなく、支払いが遅れた場合の対応や解除についても定めておくことが大切です。

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クライアントが必要な資料を提供しない

デザイン、Web制作、動画制作などでは、クライアントから写真、文章、ロゴ、商品情報などを提供してもらわなければ仕事を進められないことがあります。

ところが、何度連絡しても必要な資料が送られてこないケースがあります。

この場合、フリーランス側は仕事を進めることができません。

それにもかかわらず、当初の納期だけを守るよう求められれば、大きなトラブルになる可能性があります。

契約書には、クライアントが必要な資料を提供しない場合、納期を延長できることや、一定期間が経過した場合には契約を終了できることを定めておく方法があります。

クライアントと連絡が取れなくなった

仕事を進めている途中で、突然クライアントから連絡が来なくなることがあります。

メールを送っても返信がない。

確認事項を送っても返事がない。

修正案を提出しても確認してもらえない。

このような状態が長期間続けば、仕事を完成させることが難しくなります。

しかし、契約書に何も定めがなければ、「何日連絡がなければ契約を終了できるのか」が分かりません。

そこで、一定期間連絡が取れない場合の契約終了ルールを定めておくことが考えられます。

契約にない追加作業を繰り返し要求される

「ここを少し直してほしい」

「ついでにこの作業もお願いしたい」

このような依頼が繰り返されることがあります。

一つひとつの作業は小さくても、積み重なると大きな負担になります。

契約書で業務内容や修正回数が明確になっていなければ、追加作業なのか契約上の業務なのかをめぐってトラブルになる可能性があります。

契約外の作業を一方的に要求され、契約関係を継続することが困難になった場合には、契約終了の問題が生じることがあります。

そのため、契約書では業務範囲、追加作業、追加料金、解除条件を組み合わせて定めることが重要です。

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契約書に解除条項がなければ解除できない?

「契約書に解除について書かれていないので、契約を解除できないのでしょうか」

このような疑問を持つ方もいるでしょう。

契約書に解除条項がないからといって、どのような場合でも契約を解除できないわけではありません。

法律上の要件を満たせば、契約を解除できる場合があります。

しかし、実際にトラブルが発生したとき、「この場合は解除できるのか」「事前に通知する必要があるのか」「何日待てばよいのか」などを判断することは簡単ではありません。

だからこそ、契約書に解除条件や手続きを具体的に定めておくことに意味があります。

契約書は、トラブルが起きてから相手を攻撃するための書類ではありません。

トラブルが起きたときに「どうすればよいか」をあらかじめ決めておくためのルールブックでもあるのです。

契約を解除すると、それまでの報酬はどうなる?

フリーランスにとって特に重要なのが報酬の問題です。

たとえば、30万円でWebサイトを制作する契約を結び、作業を半分程度まで進めたところで契約が終了したとします。

この場合、15万円を請求できるのでしょうか。

実際には、単純に「半分作業したから報酬も半分」となるとは限りません。

契約内容、仕事の進行状況、契約終了の理由、制作済みの成果物をクライアントが利用できるかなど、さまざまな事情が関係します。

そこで重要になるのが、契約書の中途終了時の報酬に関する条項です。

たとえば、制作段階に応じて報酬を定める方法があります。

企画段階、初稿提出後、修正作業開始後、完成後など、制作段階ごとの支払額や割合を定めておけば、契約終了時のトラブルを減らすことができます。

制作途中の成果物はどうなる?

契約を途中で終了すると、制作途中のデザイン、イラスト、動画、文章、Webサイトなどが残ることがあります。

この制作途中の成果物を誰が利用できるのかも重要な問題です。

クライアントからすると、

「途中まで報酬を支払ったのだから使ってもよい」

と考えるかもしれません。

一方、クリエイターからすると、

「完成していない作品を勝手に使われたくない」

と考えることもあります。

契約書に何も定めがなければ、このような認識の違いがトラブルにつながる可能性があります。

そのため、契約終了時には、制作途中の成果物をクライアントに引き渡すのか、利用を認めるのか、データを削除するのかなどを定めておくことが重要です。

契約解除と著作権の関係

クリエイター契約では、契約終了時の著作権についても注意が必要です。

たとえば、契約書に「著作権は報酬の全額支払い後にクライアントへ移転する」と定めている場合があります。

この場合、報酬が支払われる前に契約が終了すると、著作権が誰に帰属するのかという問題が生じます。

また、制作途中の成果物について、クライアントが利用できるのかという問題もあります。

契約終了と著作権は別々に考えるのではなく、契約書全体の条項を確認する必要があります。

特にクリエイター向けの契約書では、報酬、契約終了、成果物の利用、著作権を関連付けて定めることが重要です。

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契約解除の通知は口頭でもよい?

契約を解除するとき、電話や口頭だけで相手に伝えることはおすすめできません。

後になって、

「解除すると言われていない」

「そのような話は聞いていない」

「契約終了日が違う」

といったトラブルになる可能性があるからです。

契約終了の通知は、メールや書面など、記録が残る方法で行うことが大切です。

重大なトラブルになっている場合や、相手が通知を受け取ったことを明確にしたい場合には、内容証明郵便を利用する方法もあります。

内容証明郵便を利用すれば、「いつ、どのような内容の文書を送ったのか」を証明することができます。

ただし、内容証明郵便を送れば、それだけで必ず契約解除が有効になるわけではありません。

解除できる理由があるのか、契約書にどのような規定があるのかを確認することが重要です。

契約書にはどのような解除条項を入れる?

契約書の解除条項は、単に「契約違反があった場合には解除できる」と書くだけでは十分とはいえません。

たとえば、次のような事項を検討します。

契約上の義務に違反した場合。

報酬の支払いが行われない場合。

必要な資料が提供されない場合。

長期間連絡が取れない場合。

信用を著しく損なう行為があった場合。

破産手続などが開始された場合。

契約関係を継続することが困難な重大な事情が生じた場合。

さらに、解除前に相手へ改善を求めるのか、重大な契約違反の場合には直ちに解除できるのかについても定めておくことが考えられます。

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解除条項の文例

契約書では、たとえば次のような解除条項が考えられます。

「甲又は乙は、相手方が本契約に定める義務に違反し、相当の期間を定めてその是正を求めたにもかかわらず、当該期間内に是正されない場合、本契約の全部又は一部を解除することができる。」

さらに、重大な契約違反などについては、事前の催告を必要とせず解除できる条項を設けることもあります。

ただし、契約書の条項は、インターネット上の文例をそのままコピーすればよいわけではありません。

仕事の内容や取引方法によって必要な条項は異なります。

デザイナー、イラストレーター、動画制作者、ライター、Web制作者など、それぞれの仕事に合わせて契約内容を検討することが大切です。

ケーススタディ|クライアントから1か月連絡がない

動画制作者Aさんは、企業からPR動画の制作を30万円で依頼されました。

契約後、Aさんは撮影と編集作業を進め、初稿をクライアントへ提出しました。

ところが、その後クライアントから連絡が来なくなりました。

Aさんは何度もメールを送りましたが、1か月以上返信がありません。

このような場合、Aさんはいつまで待てばよいのでしょうか。

契約書に連絡が取れない場合の規定がなければ、判断が難しくなります。

一方、

「相手方から30日以上連絡がなく、業務を継続することが困難な場合には契約を終了できる」

などの規定があれば、対応しやすくなります。

さらに、契約終了時までに行った作業の報酬や、制作途中の動画データの取扱いについても定めておけば、トラブルを防ぎやすくなります。

このケースから分かるのは、解除条項だけを定めればよいわけではないということです。

契約終了時の報酬、成果物、著作権、データの取扱いまで含めて考える必要があります。

契約解除・中途解約でトラブルを防ぐためのチェックリスト

契約解除・中途解約でトラブルを防ぐためのチェックリスト

契約を結ぶ前には、次の点を確認しておきましょう。

  • どのような場合に契約を解除できるか
  • 契約違反があった場合、事前に改善を求める必要があるか
  • 重大な契約違反の場合、直ちに解除できるか
  • クライアントと連絡が取れない場合のルールがあるか
  • 必要な資料が提供されない場合のルールがあるか
  • 報酬が支払われない場合の解除について定めているか
  • 中途解約ができるか
  • 解約する場合の事前通知期間が決まっているか
  • 契約終了時までに行った仕事の報酬について定めているか
  • 制作途中の成果物の取扱いが決まっているか
  • 契約終了時の著作権の帰属が明確になっているか
  • データや秘密情報の返還・削除について定めているか

一つでも明確になっていない事項がある場合には、契約書の内容を見直すことをおすすめします。

まとめ|契約の「始め方」だけでなく「終わり方」も決めておく

フリーランス・クリエイターの契約では、業務内容、報酬、納期などに注目しがちです。

しかし、契約関係がいつも予定どおり最後まで続くとは限りません。

報酬が支払われない。

必要な資料が提供されない。

クライアントと連絡が取れない。

契約にない作業を繰り返し要求される。

さまざまな理由によって、契約を途中で終了せざるを得ないことがあります。

このようなときに重要になるのが、契約解除や中途解約に関するルールです。

どのような場合に契約を終了できるのか。

契約終了時までに行った仕事の報酬はどうするのか。

制作途中の成果物はどうするのか。

著作権は誰に帰属するのか。

これらを契約書であらかじめ定めておけば、トラブルが発生したときにも対応しやすくなります。

契約書は、仕事を始めるためだけの書類ではありません。

万が一問題が起きたときに、契約関係をどのように終了するのかを決めておく役割もあります。

フリーランス・クリエイターとして安心して仕事を続けるためにも、契約の「始め方」だけではなく「終わり方」についても確認しておきましょう。

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