AIを使って制作すると契約違反?クリエイターが確認すべきAI利用条項

ノートパソコンで生成AIを活用しながら契約書を確認するクリエイターと、AI・著作権・機密情報・事前承認をイメージしたアイコンを組み合わせた、AI利用条項を解説するブログのアイキャッチ画像。
目次

はじめに

近年、ChatGPTや画像生成AIをはじめとする生成AIの急速な普及により、ライターやデザイナー、イラストレーター、動画編集者、Web制作者など、多くのフリーランスやクリエイターが制作業務の一部にAIを活用するようになりました。

生成AIは、文章作成やアイデア出し、画像制作、プログラム作成など、さまざまな場面で作業時間を短縮できる便利なツールです。しかし、その一方で「AIを使って制作しても問題ないのだろうか」「契約違反にならないだろうか」と不安を感じる方も少なくありません。

実際に近年では、企業がフリーランスへ提示する業務委託契約書の中に、「AI利用条項」が盛り込まれるケースが急速に増えています。

例えば、

□ AIを利用して作成した成果物は納品できません

□ AIを利用する場合は事前に承諾を得てください

□ 機密情報をAIへ入力してはいけません

□ AIを利用した場合でも成果物の品質については受託者が責任を負います

このような条項が契約書に記載されていることも珍しくありません。

契約内容を十分に確認しないままAIを利用すると、報酬の支払いを拒否されたり、契約を解除されたり、場合によっては損害賠償を請求される可能性もあります。

この記事では、フリーランスやクリエイターが契約書を確認する際に知っておきたい「AI利用条項」のポイントについて、行政書士の視点から分かりやすく解説します。


AI利用条項とは?

AI利用条項とは、契約書の中で生成AIやAIツールの利用方法や利用条件を定めた条項のことです。

数年前まではほとんど見かけませんでしたが、生成AIの普及に伴い、多くの企業が契約書へ盛り込むようになりました。

企業によって考え方はさまざまで、

□ 自由に利用できる

□ 一部の業務のみ利用できる

□ 事前承認が必要

□ 一切利用を禁止する

など、条件は大きく異なります。

つまり、「AIを使ってはいけない」という法律が存在するわけではありません。

重要なのは、契約書でどのようなルールが定められているかです。


なぜAI利用条項が増えているのでしょうか?

□ 情報漏えいを防ぐため

生成AIへ入力した情報の取扱いについて、不安を抱く企業は少なくありません。

例えば、

□ 新商品の企画書

□ 顧客情報

□ 社内マニュアル

□ 未公開デザイン

□ 開発中のシステム

などをAIへ入力すると、企業秘密が漏えいするリスクがあると考える企業もあります。

そのため、「機密情報はAIへ入力してはならない」という契約条項を設けるケースが増えています。


□ 著作権トラブルを避けるため

AIが生成した文章や画像については、利用方法によって著作権などの権利関係が問題となる可能性があります。

企業としては、

「後から権利関係でトラブルになるくらいなら、契約書でAI利用条件を明確にしておきたい」

という考えから、AI利用条項を設けるケースが増えています。


□ 品質を維持するため

生成AIは非常に便利ですが、必ずしも正しい情報を出力するとは限りません。

存在しない判例を引用したり、誤った統計を示したり、もっともらしい内容を事実のように説明してしまうこともあります。

そのため、

「AIを利用しても構わないが、最終的な品質についてはクリエイターが責任を負うこと」

という内容を契約書へ記載する企業も少なくありません。


契約書で確認したいポイント

AIの利用は禁止されていないか

まず確認したいのは、AIそのものの利用が禁止されていないかという点です。

例えば、

「受託者は生成AIその他これに類するシステムを利用して成果物を作成してはならない。」

このような条項がある場合には、ChatGPTや画像生成AIなどを利用して成果物を作成すると契約違反となる可能性があります。

「少しだけ使ったから問題ないだろう」と自己判断するのではなく、契約内容を優先しましょう。


AIを利用するには事前承認が必要か

契約書には、

「AIを利用する場合は、事前に発注者の承諾を得ること。」

という条項が設けられていることがあります。

この場合、AI利用そのものは禁止されていませんが、無断で利用することはできません。

承認を受ける際は、メールやチャットなど記録が残る方法で行うことをおすすめします。

口頭だけでは、後から「言った・言わない」のトラブルになる可能性があります。


AIへ入力できる情報の範囲

AI利用条項では、AIへ入力できる情報を制限している場合があります。

例えば、

□ 顧客情報

□ 個人情報

□ 社内資料

□ 未公開データ

□ 商品開発情報

などは入力を禁止されることがあります。

特に秘密保持契約(NDA)を締結している場合は、AI利用条項だけではなく、秘密保持条項についても必ず確認しましょう。


AIを利用した場合でも責任はクリエイターにある

「AIが作った文章だから間違っていても仕方がない」

このような考え方は、契約上はほとんど認められません。

成果物を納品するのはクリエイター自身であり、その内容について最終的な責任を負うのもクリエイターです。

例えば、

□ 誤った法律情報

□ 存在しない判例

□ 架空の統計データ

□ 不自然な翻訳

□ 誤った引用

などが含まれていた場合には、成果物の品質不足として修正や損害賠償の問題に発展する可能性があります。

AIはあくまで「作業を補助するツール」です。

納品前には必ず人の目で内容を確認し、事実関係や引用元をチェックすることが重要です。


AI利用時に必ず守りたいポイント

契約トラブルを防ぐためには、次の点を意識しましょう。

□ 契約書でAI利用条件を確認する

□ 不明な点は契約前に質問する

□ 必要な場合は事前承認を受ける

□ 承認はメールやチャットで記録を残す

□ 機密情報や個人情報はAIへ入力しない

□ AIの出力内容をそのまま信用しない

□ 著作権や利用条件を確認する

□ 納品前に必ず人が最終確認を行う

これらを習慣化することで、AIを便利に活用しながら契約上のリスクを大きく減らすことができます。


フリーランス新法とAI利用条項の関係

2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(いわゆる「フリーランス新法」)では、発注者に対して取引条件を書面や電子メールなどで明示することが義務付けられています。

この法律は、AIの利用そのものを規制するものではありません。しかし、発注者が「AIを利用してほしくない」「AIを利用する場合は事前承認を受けてほしい」と考えるのであれば、その条件を契約書などで明確に示すことが望ましいといえます。

反対に、契約書に何も記載がないにもかかわらず、納品後になって「AIを使うとは思わなかった」「AIを使った成果物は受け取れない」と主張されると、双方の認識の違いからトラブルへ発展する可能性があります。

そのため、AI利用に関するルールは、契約締結前にお互いが確認し、必要に応じて契約書へ明記しておくことが大切です。

フリーランス法の詳しい内容については、 公正取引委員会のフリーランス法特設サイト も参考になります。


実際によくあるトラブル事例

事例1 AI利用禁止条項に気付かず納品してしまったケース

WebライターのAさんは、記事の構成や下書きの作成にChatGPTを利用し、内容を自分で修正・加筆したうえで納品しました。

ところが、納品後に契約書を改めて確認すると、「生成AIを利用して作成した成果物は納品してはならない」との条項が記載されていました。

発注者は契約違反であるとして成果物の受領を拒否し、報酬も支払われませんでした。

Aさんは「最終的には自分で修正したから問題ない」と考えていましたが、契約書にはAI利用自体が禁止されていたため、その主張は認められませんでした。

契約書の内容を十分に確認しないまま制作を始めたことが、大きな損失につながった事例です。


事例2 AI利用について双方の認識が異なっていたケース

イラストレーターのBさんは、画像生成AIで作成した画像をベースに、自ら大幅な加筆・修正を行い、イラストを完成させました。

契約書にはAI利用に関する記載はありませんでしたが、依頼者は「すべて手描きで制作されるもの」と考えており、納品後にAIを利用していたことが判明すると、大きな問題となりました。

最終的には契約解除には至りませんでしたが、双方の信頼関係は大きく損なわれ、その後の継続契約は終了しました。

このように、契約書にAI利用条項がない場合であっても、認識の違いからトラブルになることがあります。

AIを利用する予定がある場合は、事前に発注者へ相談し、利用の可否を確認しておくことが望ましいでしょう。


契約書を作成する際に確認したいチェックポイント

AI利用条項だけを確認すれば十分というわけではありません。

契約書全体の内容を確認することで、さまざまなトラブルを未然に防ぐことができます。

契約締結前には、次の項目を確認しておきましょう。

□ 業務内容は具体的に記載されているか

□ 納品方法や納品期限が明確になっているか

□ 修正回数や追加料金の条件が決まっているか

□ 検収方法や検収期限が定められているか

□ AI利用条項の内容を確認したか

□ 報酬額・支払期限・振込手数料の負担者が明記されているか

□ 著作権の帰属が明確になっているか

□ 秘密保持義務(NDA)の内容を確認したか

□ 契約解除の条件が定められているか

□ 損害賠償の範囲が明確になっているか

□ 合意管轄(裁判所)が定められているか

これらが曖昧なまま契約を締結すると、後になって「そんなつもりではなかった」という認識の違いが生じやすくなります。


契約書を作成するメリット

契約書を作成することには、多くのメリットがあります。

例えば、

・お互いの役割や責任が明確になる

・業務範囲が明確になり、追加作業のトラブルを防げる

・報酬や支払条件について認識の違いを防げる

・著作権などの権利関係が整理される

・AI利用に関するルールを共有できる

・万が一裁判になった場合の重要な証拠となる

契約書は「相手を信用していないから作るもの」ではありません。

安心して仕事を進めるための共通ルールを定めるものです。


行政書士に依頼するメリット

契約書は、市販の書籍やインターネット上のひな形を参考にして自分で作成することも可能です。

しかし、そのようなひな形は一般的な内容にとどまることが多く、実際の取引内容に合わない場合があります。

また、生成AIの普及に伴い、契約書に盛り込むべき内容も大きく変化しています。

数年前に作成された契約書では、

・AI利用条項

・AIへの情報入力制限

・AI利用時の品質保証

・AI利用の開示義務

などが考慮されていないことも少なくありません。

行政書士へ依頼することで、

・業務内容に合わせた契約書を作成できる

・将来起こり得るリスクを事前に想定できる

・最新の法改正や実務に対応した内容へ見直せる

・相手から提示された契約書の内容について相談できる

といったメリットがあります。

契約書は、一度作成したら終わりではなく、社会情勢や技術の変化に応じて定期的に見直すことが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. AI利用条項がなければ自由にAIを使えますか?

契約書に禁止規定がない場合でも、依頼内容や業務の性質によってはAI利用が想定されていないことがあります。迷った場合は、事前に確認することをおすすめします。


Q2. ChatGPTで作成した文章をそのまま納品しても問題ありませんか?

契約内容によります。また、AIが誤った情報を出力する可能性もあるため、そのまま納品することは避け、必ず内容を確認・修正しましょう。


Q3. AIで作成した画像は著作権上問題ありませんか?

利用するAIサービスの利用規約や生成方法によって異なります。契約内容だけでなく、サービスの利用条件も確認することが重要です。


Q4. AI利用を相手へ伝える義務はありますか?

契約書にそのような条項がある場合は従う必要があります。記載がない場合でも、事前に説明しておくことでトラブル防止につながります。


Q5. 契約書は毎回作成しなければいけませんか?

継続的な取引では、基本契約書を締結し、個別案件ごとに発注書や注文書で対応する方法が一般的です。


Q6. メールやチャットだけでも契約は成立しますか?

成立する場合があります。ただし、後から内容を証明しにくいため、できるだけ正式な契約書を作成することをおすすめします。


Q7. 電子契約でも問題ありませんか?

はい。適切な電子契約サービスを利用すれば、紙の契約書と同様に利用できます。


Q8. AI利用条項は今後さらに増えていくのでしょうか?

生成AIの普及が進む中で、AI利用条項を設ける企業は今後さらに増えると考えられます。新しい契約書では、AI利用に関する条件を確認することが重要になるでしょう。


関連記事

まとめ

生成AIは、フリーランスやクリエイターにとって非常に便利なツールです。しかし、便利だからといって、契約内容を確認せずに利用すると、思わぬトラブルへ発展する可能性があります。

重要なのは、「AIを使ってよいかどうか」を自己判断するのではなく、契約書の内容を確認し、必要に応じて発注者と認識を共有することです。

契約書は、お互いの権利や義務を明確にし、安心して仕事を進めるための大切なルールです。

取引金額の大小にかかわらず、契約内容を十分に確認し、必要に応じて見直すことが、長く信頼関係を築く第一歩となります。


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